今回は代理について。
簡単に言うと自分の代わりに代理人に交渉に当たってもらうこと。

代理
Aさん(本人)が自分の代わりにCさんを代理人としてBさん(相手方)と交渉にあたってもらう。
直接の意思表示はCさんとBさんの間で行われている。
効果はAさんとBさんの間に帰属する。

ちなみに土地家屋調査士は表示に関する登記の代理人になれる。
代理とは、本人のためにすることを「本人の名で」示して相手方に対して意思表示をし、その法律効果を直接本人に帰属させる制度。
代理の種類
・任意代理(本人がやってもいいけど難しいので本人からお願いされた代理)
私的自治の拡張という。※土地家屋調査士もこれにあたる。
・法定代理(法律で代理権が決まってる(制限行為能力者の代理など)代理)
私的自治の補充という。
使者
本人の手紙を他人に届けたり、本人の意思を相手方に表示するだけの者。
代理人とは言えない。
代理人:意思能力が必要/意思の瑕疵→代理人を基準に決する
使者:意思能力は不要/意思の瑕疵→本人を基準に決する

代理の要件・効果
①代理人に有効な代理権がある
②本人のためにすることを示すこと(顕名)
③代理人が代理権の範囲内で意思表示をなすこと(代理行為)
この要件が満たされた時、本人・相手方間に直接効果が生じる。
代理権
任意代理の場合、本人の代理権授与行為により代理権が発生する。
あなたに代理権を与えますよと言うこと。(委任状など)
※法定代理の場合は法律の規定などにより代理権が発生する。
法律効果が帰属するためには代理権の範囲内の行為でなければいけない。
代理権の範囲の定めがない場合
①保存行為(家の修繕など)
②利用行為(性質を買えない範囲で利用したり収益を図る(現金を銀行に預金するなど))
③改良行為(家屋に電気・水道などの設備を施すなど)
要はマイナスにはならない行為のこと。
自己契約・双方代理の禁止
自己契約
AさんがBさんに土地を買ってくれる人を探すようにお願いしたら自分で買いたいと言い出した。
代理人=相手方ということは禁止
双方代理
AさんとCさんも代理人を同じ人(Bさん)に依頼していた。
AさんもCさんも不利益を被る可能性があるので禁止。
自己契約も双方代理も本人の利益を不当に害するものだから禁止ということ。
→本人の許諾なくしてなされた自己契約・双方代理は無権代理になる。
無権代理なので本人は「知りませんよ」と言うことができる。
ただし本人が追認すれば有効な代理行為となる。(条件が良かったりすると)
本人に不利益でなければ自己契約・双方代理を禁止する必要もないということだね。
①債務の履行の場合
②本人があらかじめ許諾した場合
③その他本人の利益を害さないと認められる場合
は例外的に自己契約・双方代理は許される。
本人の許可があれば自己契約も双方代理もOK
権限濫用
代理権の範囲内の行為を行ったものの、それが自分or第三者の利益を図ろうとしていた場合、権限濫用となる。
売ったお金を自分のものにしようとか、相手方と結託するなど。
相手方が悪意(知っていたor知ることができた)、または有過失であれば無権代理行為とみなされる。
代理権の消滅原因
本人(依頼した側)、または代理人が死亡したら代理権が消滅する。
・破産手続き開始決定した場合、法定代理の本人の代理権は消滅しない。
子供が破産したからといって親が面倒を見なくてよくなるというわけではないよね。
・後見開始の審判を受けた(制限行為能力者になった)。
代理人が制限行為能力者になったら当然代理権は消滅するが、本人は消滅しない。
(法律行為の当事者にはならないから)
・解約告知(もう代理人じゃないからねと言うこと)は任意代理の場合は代理権は消滅するが、法定代理の場合は消滅しない。(親子の縁は切れないもんね)
そうそう、登記申請する者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては消滅しない。
家を建てた人が死んでも家を建てた事実は消えないため、死亡者の名義で登記申請をすることができるということ。

法人が消滅しても同じく代理権は消滅せず登記できる。
民法に関しては任意代理の場合、本人死亡で代理権が消滅するが、不動産登記法では消えない。
顕名
本人のためにすることを代理人が表示すること。
「本人(Aさん)の代わりに私(B)があなた(Cさん)と取引しますね」
とちゃんと示すこと。
Bさんが「私がAです」と言ってCさんと取引するのも有効な顕名として認められる。
(結果は同じだから)
代理人が顕名を行わなかった場合は、相手にとってはAさんと取引しているとはわからないため、BさんとCさんの間の取引になる。
ただし、相手方(Cさん)が代理人が本人のためにする行為ということを知っていた場合はBさんがAさんの名前を出さなくても契約は成立する。
要するにどんな形であれ相手方(Cさん)にAさんの代理ということが伝わっているかが大事。
代理行為の瑕疵
①意思の不存在
②瑕疵ある意思表示
代理行為について瑕疵(間違い)があるか否かは実際にその行為をした代理人自身について決定される。
つまり、本人が勘違いしていたとかは関係なく、代理人の意思表示について瑕疵があるかどうかが問題。
本人が詐欺をしていなくても代理人が詐欺をしていた場合、相手方(Cさん)は取消しをすることができる。
では本人が相手方に詐欺をした場合は?
→本人は第三者とはならず(第三者による詐欺)に該当せず、相手方は無制限に取り消せる。
代理人に求められる能力
意思能力。
これは当然。
ただし、行為能力は不要。つまり制限行為能力者を代理人に立てることができる。
そして制限行為能力者だという理由で取り消すことはできない。
例外
未成年者Aの父Bが成年後見開始審判を受けている場合、法定代理人Bが本人Aを代理してた行為については制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為になるので、これは取消しができる。
つまり制限行為能力者(未成年)の代わりに父親が代理行為を行っていたわけだけど、父親自身も制限行為能力者になってしまった場合はダメだよということ。
代理人を選ぶ側(本人)が分かってて制限行為能力者を選ぶのはOKだけど、制限行為能力者(未成年など)は適切に選ぶ能力がないのでこのケースではダメということ。
理解した上で制限行為能力者を代理人にするのはOK。
制限行為能力者が制限行為能力者を代理人にするのはNG。
復代理
代理人が自分の名でさらに違う代理人を選任して本人の代理をする制度。
専門的な内容の場合、自分では対処できないため。
Aさんが土地を買うためにBさんを代理人に選定した。Bさんは土地に詳しくないのでCさんを復代理に選任した。
Cの行為は本人(Aさん)に帰属する。
ようするに復代理人は本人の代理人。Bさんの代理人ではない。(BさんとCさんで違いはない)
注意としては、Cさんを復代理に選んだからと言ってBの代理権が消えるわけではない。
代理人と復代理人は同等の立場ということ。
Cさんの代理権はBさんの代理権に基礎を置く。なのでBさんの代理権の範囲を越えることはできない。
そしてBさんの代理権が消滅したらCさんの復代理権も消滅する。

法定代理の場合は復代理人を立てることができる。
Aさん(未成年者)が親(Bさん)に「土地買ってきて」と言っても親は素人。なので復代理人を選ぶことができる。
代理人(Bさん、親)は全責任を負うが、やむを得ない事由(やったことないので専門家を選ぶ)で復代理を選んだ場合は、選任・監督の責任のみを負う。
つまりこの場合代理人(親)は専門家ではないので、選んだり監督する責任だけを負いますということ。
一方、任意代理の場合は原則として復代理人を選任することはできない。
任意代理の場合、Bさんが専門家だからAさん(本人)は選んだため。
ただし、本人(Aさん)の許諾がある場合、やむを得ない事由がある場合(遠すぎるなど)は復代理人を立てることができる。
その代わり、復代理人の全行為について責任を負う必要がある。
やむを得ない事由がどちらにあるのかがポイント。
