土地家屋調査士

【土地家屋調査士・民法】担保物権②

担保物権の続き。

【土地家屋調査士・民法】担保物権今回は担保物権に関して。 https://tochikaokuchosashi.com/yoekibukken/ 担保物件 債...

抵当権

債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産から債権者が優先弁済を受けることができる権利。

居住や営業を続けながら担保の目的物とすることができる点に意義がある。

逆に、お金を貸すほうが使う権利があるのが質権だったね。

債権者と抵当権設定者(債務者または物上保証人)の合意のみによって設定される。

物上保証人

自己の財産をもって他人の債務の担保に供した者

子供がお金を借りるために親の土地を抵当権につけるなど。

被担保債権

被担保債権は金銭債権である必要はない。

また、将来発生する債権のために設定することもできる。

抵当権の目的物

抵当権は、不動産(所有権)・地上権・永小作権を目的として設定することができる。

※抵当権がついているという公示ができるものなら設定できる

抵当権の順位

抵当権の優先順位は登記によって決まる。

抵当権の効力

元本債権は全額担保される。利息は最後の2年分は担保を受けることができる。

※利息がどれだけ膨らんでいるのかは登記記録からは確認できない(公示されない)ため

抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲

不動産のどこまで抵当権が及ぶのか?

付加一体物(付加物)

土地に植栽された樹木、建物に増築された部屋には効力がおよぶ。

付加一体物となった時期は問題にならない。

※抵当権を付けた建物と別の時期に建てた附属建物にも効力は及ぶ。

※2つで1つの建物と捉えられる。増築された部屋と同じ考え。

ただし、抵当地の上に存する建物には効力は及ばない。

土地に抵当権を付けて、その上にある建物には効力は及ばないということ。土地と建物は別の不動産と考える。

従物

抵当権「設定当時」に抵当目的物の従物であった場合は抵当権の効力が及ぶ。

逆に言うと設定当時に従物がなく、その後できた場合は効力が及ばない。

従物の例

力宅地上の石灯篭、取り外しのできる庭石、ガソリンスタンド用の建物における地下タンクや洗車機など

従たる権利

建物に抵当権を設定した場合、その敷地利用権にも抵当権の効力が及ぶ。

Aさんの土地をBさんが借りて(地上権を設定して)建物を建てた。建物には抵当権を設定した。

債権者のCさんが建物を手に入れた場合、地上権も同時に手に入れることになる。

果実

被担保債権の不履行があった時は、その「後」に生じた抵当不動産の果実に抵当権の効力が及ぶ。

物上代位

債務者(Bさん)の家が火事で消滅した場合、火災保険が降りるが、債権者のA銀行はBさんの保険金請求権を払い渡し前に差し押さえて(権利質)抵当権の効力を及ぼすことができる。

※とりっぱぐれのないように

・差押さえ

→二重弁済を防ぐため。第三債務者を保護するため。

一般債権者による差押えとの優劣

抵当権者の抵当権設定登記より「先に」一般債権者の第三債務者への送達がされていれば一般債権者の勝ち。

※基本的に早いもの勝ち

法定地上権

抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一である場合に設定されたが、抵当権実行の結果、土地と建物の所有者が異なることになった場合、建物所有者のために法律上当然に設定される地上権。

Aさんの土地にAさんが建物を建てるのに権利はいらないよね?

だけど、抵当権実行によって土地はBさん、建物はCさんとなるような場合、CさんはBさんの土地の上に何の権利もなく建物を持っている状態になる。

なのでBさんはCさんに「どいて」と言えることになる。そうすると建物が無駄になる(というか売れない)ので社会経済上の不利益になるためこれを回避するもの。

なので、ここに地上権を付けられることにした。(法定地上権)

これにより建物を撤去する必要はなくなる。(建物を壊さないのが目的)

法定地上権の成立要件

①抵当権設定当時に土地の上に建物が存在していたこと(登記はいらない

②抵当権設定当時に同一人がその土地と建物を所有していたこと

③土地・建物の一方または双方に抵当権が存在すること

④競売が行われて、土地と建物別々のものが所有するに至ること

※判例の方が試験によく出る

①に関する判例

・更地に抵当権が設定された場合

土地に1番抵当権が設定された当時に建物が存在しなければ、2番抵当権設定同時に建物は存在し、2番抵当権者が抵当権を実行したとしても法定地上権は成立しない。

→1番抵当権者を保護すべき。(更地の方が評価が高いのでその価格で売れるようにすべき)

・土地に抵当権を設定した後に建物を取り壊し、建物を再築した場合

旧建物と同一の範囲で新建物のために法定地上権が成立する。

新建物が堅固なものである場合、抵当権者の利益を害しないと認められる特段の事情があるときに限り新建物を基準とする法定地上権が成立する

→元々建物がある状態で土地を評価しているため

・土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、当該建物が取り壊され新たに建物が建築された場合

①新建物の所有者が土地の所有者と同一

かつ、

②新建物が建築された時点での土地抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事情がない限り、新建物のために法定地上権は成立しない

共同担保関係

一つの抵当権に対して複数の不動産をだすこと

→最初の建物で評価したのに、次に建てた建物のレベルが低い場合、保護されないから

なので成立させずに更地にして土地の価値を上げた。

②に関する判例

抵当権設定当時、土地と建物とが同一所有者に属していたがその後、各別の所有者に属することになった場合、その抵当権が実行された時は法定地上権が成立する。

抵当権設定当時、土地と建物の所有者が別人であったがその後、同一の所有に属することになった場合、法定地上権は成立しない。

要するに設定時に同一人が所有していなければいけない。

「建物に」1番抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、2番抵当権が設定された当時は双方の所有者が同一となった場合には、一番抵当権者の申し立てによる競売が行われた時でも法定地上権が成立する。

1番抵当権者を保護するため。もし法定地上権が成立しない場合、1番抵当権者の建物が収去されてしまうため。

※最初に設定した地上権は消えてしまった。

「土地に」1番抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、2番抵当権が設定された当時は双方の所有者が同一となった場合には法定地上権は成立しない。

→この場合は他人の建物がある土地を評価されてしまうため(更地にしてあげよう)

土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅しその後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合、当該土地と建物が甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していた時は法定地上権が成立する。

→1番抵当権が解除で消滅してるため

土地およびその地上建物の所有者が建物について抵当権を設定した時は、土地の所有権移転登記を経由していなくても抵当権実行により法定地上権が成立する。

→登記はいらず、建物が存在していればOK

土地と建物が共有だった場合

いずれも共有者を保護するという視点が大事。

AさんとBさん共有の土地上にAさん所有の建物が存在し、Aさんの土地持分に抵当権が設定された場合

法定地上権は成立しない

※Bさんは何も悪くないのに土地を使えなくなってしまうから

Aさん所有の土地上にAさんとBさん共有の建物が存在し、Aさんの土地に抵当権が設定された場合

→法定地上権が成立する

※成立しないとBさんが追い出されてしまう

土地、建物双方が共有関係にある場合

→土地共有者が法定地上権の発生をあらかじめ容認していると見ることができるような特段の事情がない限り、共有地について法定地上権は成立しない。

※知らない人と土地、建物を使うとなってしまうため

要するに「土地が共有の場合、法定地上権は成立しない」ということ。

土地が共有の場合、法定地上権は成立しない

法定地上権の及ぶ土地の範囲は、建物を利用するのに必要な範囲に限られる。

法定地上権を第三者に対抗するには、地上権の登記、または建物の登記が必要

抵当権の侵害

債務者が担保になっている不動産の価値を下げるような行為をした場合、債権者は不動産の明け渡しを請求することができる。

※担保価値が減少して被担保債権の弁済を受けられなくなった時には、抵当権者は妨害排除請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権を行使できる。

Bさんの土地に不法占有者(Cさん)が現れた時は債権者(Aさん)は「Bさんに返しなさい」と言うこともできるし、直接「自分に明け渡しなさい」と言うこともできる。

※本来の抵当権の効力にはないが「直接債権者に返せ」と言えるのがポイント

抵当権と利用権

①一括競売

土地について抵当権を設定した後に、土地上に建物が築造された場合、抵当権者は土地と一緒に建物も競売にかけることができる。

※土地だけの競売が事実上困難なため

※抵当権設定者以外の者が建物を築造した場合でも一括競売することができる

ただし、建物相当額については優先弁済権が認められない。

②建物賃借人のための明渡猶予制度

抵当権設定登記「後」の賃貸借は、抵当権者および競売における買受人に対抗することができないが、抵当建物の賃借人については買受人の買受けの時から6ヶ月間の占有が認められる。

→アパートの住人に関しては6ヶ月間は住んでていいよということ。この間に次の住居を決めたりする。

※当然使用の対価(いわゆる家賃)は払う必要がある。借主、貸主の間柄ではないので。支催告されたにも関わらず払わなかった場合はその占有は認められない。

③同意による賃借権の対抗

抵当権の登記「後」に登記された賃貸借でも、これに優先する「すべての」抵当権者が同意し、かつ、同意について登記された時は、例外的にその同意をなした抵当権者に対抗することができる。

テナントビルを建設し、抵当権を付けた。テナントには店舗が入っている。抵当権が実行された場合、店舗を入れた状態のまま競売したい状況も多く、テナントごと競売に出して、買受人はその賃料を想定する。この場合競売されても賃借権は残る。

第三取得者の保護

抵当権を付けた土地をBさんがCさんに売った場合、抵当権は消えずにCさんの物になる。

Cさんが土地を持ってるのにBさんがお金を返せなかったらA銀行が土地を競売にかけるということになってしまう。

①代価弁済

抵当権者(A銀行)の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済した時は抵当権は以後その第三者との関係で消滅する。

Cさんがお金を払えば抵当権は消しますよと。払えなかったら競売になる。

銀行側が提示

②抵当権消滅請求

抵当不動産の所有権を取得した第三者(Cさん)は抵当権の消滅請求をすることができる。

CさんがAさん銀行に提示する。飲まなければ2ヶ月以内に抵当権が実行される。

第三者側が提示

主たる債務者、保証人およびこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

抵当権の処分

抵当権者が被担保債権の弁済期前に資金回収を図るために抵当権を処分することもある。

①転抵当

A銀行が抵当権を付けたが、弁済前に資金が欲しくなった。その場合、その抵当権を担保に別の銀行から融資を受けることができる。

②抵当権の順位の変更

抵当権の順位を関係当事者間において変更すること。

各抵当権者の合意によって変更することできるが、転抵当権者などの利害関係人がある時にはその者の承諾も必要。

③抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄

※計算問題での出題可能性が高い

・抵当権の譲渡

一般債権者に優先枠をあげること

・抵当権の放棄

一般債権者に優先枠を分けること

・抵当権の順位の譲渡

抵当権者同士で優先枠をあげること

・抵当権の順位の放棄

抵当権者同士で優先枠を分けること

配当額

Bさん(1番抵当権者):100万円

Cさん(2番抵当権者):150万円

Dさん(一般債権者):300万円

競売代金200万円

の場合。

①BさんがDさん(一般債権者)に対して

抵当権の譲渡

Dさん:100万円

Cさん:100万円

Bさん:0円

抵当権の放棄

Bさん:25万円

Cさん:100万円

Dさん:75万円

※100万円をBさんとDさんの債権額の比(100万円:300万円=1:3)で分配

※関係ない人の配当は変わらない

②BさんがCさんに対して

抵当権の順位の譲渡

Cさん:150万円

Bさん:50万円

Dさん:0円

抵当権の順位の放棄

Bさん:80万円

Cさん:120万円

Dさん:0円

※200万円をBさんとCさんの債権額の比(100万円:150万円=2:3)で分配

※関係ない人の配当は変わらない

抵当権の消滅

消滅事由

①物権の一般的な消滅事由(無くなったら抵当権も消滅する)

建物を取り壊したら土地家屋調査士が滅失登記をする。抵当権が付いていたら債権者の承諾書は必要か?

→承諾書は不要。滅失登記の場合、消滅承諾書はいらない。

②担保物権の一般的消滅事由

債権が消えれば担保物件も消える

③抵当権の消滅事由(代価弁済、抵当権消滅請求)

などがある。

根抵当権

枠の中で決めた複数の債権をまとめて取ること。

限度額(極度額)まで担保することを目的とする抵当権。

抵当権は一つの抵当権に複数の不動産がついていることがあり得る(仮登記の段階でも

一方、根抵当権の場合は、1つの根抵当権が複数の不動産についていることはありえるが、仮登記の根抵当で複数の不動産に付くことはない。

共同根抵当権は根抵当権の本登記の時に共同という形になるが、仮登記の段階ではバラバラに設定する。

※同じ根抵当権が付いていたら合筆、合併できる。

→仮登記抵当権ではありえるが、仮登記根抵当権ではあり得ない。(不動産登記法の方で)

要するに根抵当は仮登記の段階では複数の不動産にはつかないというのがポイント。

根抵当は「仮登記」の段階では複数の不動産にはつかない

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