今回は契約行為の無効と取消について。
無効と取消は似ているようで実は性質が違う。

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無効
最初から効果が生じないのが無効。
なのでどのような効果も帰属しない。
①誰でも主張することができる
②誰に対しても無効を主張することができる
主張期間の制限もない。なので、いつでも、いつまでも主張できる。
追認に寄ってもその効力は生じない(そもそも契約行為が無かったこととしてるので)
ただし当事者が無効だと知って追認した時はその時から新たな行為をしたものとみなされる。
「あ、この契約ぶっちゃけ無効なんだけど、まあ条件が良いから追認するか」みたいな。
取消し
一方取消しは、取消しするまでは有効ということ。
取消したら遡って効力が無くなる。(遡及効)
遡ること
行為能力の制限による取消を主張できる人。
①制限行為能力者(本人。代理人の同意はいらない)
②代理人(親権者、成年後見人など)
③承継人
④同意することができる者(保佐人、被補助人など)
契約したけどこれは制限行為能力者(判断力が無い人)がしたもの。だから取消しますよと。
錯誤・詐欺・脅迫による取消を主張できる人
①錯誤に陥った者、詐欺・脅迫を受けた者(相手方からの取消しはできない)
②代理人
③承継人
当然ながら詐欺・脅迫した側が取り消すことはできない。
また取消の場合は誰に対してもできるというわけではなく、相手方に対する意思表示によって行う。
例
AさんがBさんに渡した債権をBさんはCさんに譲った。
Aさんは債権を取り返したいが、この場合は直接の相手方であるBさんに対して取消しの意思表示を行う。
取り消された行為ははじめから無効になる。(なかったことになる)
これを「原状回復義務」という。
例えばコンビニで買ったおにぎりを制限行為能力を理由に取消した。
買った方はおにぎりを返し、売った方はお金を返す義務を負うことになるよね。
つまり元通り。(原状回復)
ただし例外として、制限行為能力者は現存利益において償還義務を負う。
つまり生活費に使った分は返すが、ギャンブルに使った分は返さなくてよいということ。
取消した場合、制限行為能力者は現存利益において償還義務を負う
追認
ここからは追認についてより詳しく説明。あとから契約行為を認めることが追認だったね。
つまりこれは取消権を放棄すること。取り消すことができる行為を確定的に有効にすることだとも言える。
以下条件。
①追認権者による意思表示である
※制限行為能力者(成年被後見人を除く)も、法定代理人・同意権者の同意を得れば有効に追認をすることができる。
取り消しは制限行為能力者であっても単独ですることができたけど、追認は同意がいるということ。
制限行為能力者は判断能力がないので同意が必要だよねと。
成年被後見人に関しては、成年後見人に同意権がないため追認はできない。
(同意に基づく的確な行為が期待できないため)
②追認が取り消しの原因となっていた状況が消滅した後にされること
追認は脅迫や詐欺、錯誤といった状況が消滅した後にされなければならないということ。
(脅迫されたまま追認しても意味がないよね)
③取消権を有することを知っていること
単純に取消権があるということを知っている必要があるということ。
以上、追認の条件が揃っていれば以後取り消すことはできず、意思表示は確定的に有効となる。
法定追認
追認には法定追認といって、
相手に言わなくても、こういうことをしたら自動的に追認になりますよ。というものがある。
①全部または一部の履行
②履行の請求
※相手方の請求を受けた場合は✕
③更改
④担保の供与
⑤取得した権利の全部または一部の譲渡
※相手方が譲渡した場合は✕
⑥強制執行
※相手方の執行を受けた場合は✕
りせいこうたんじょうきょう
李成功、誕生、今日ついに (「ついに」は追認)
と覚えたら覚えやすいかも、、。
そして、※印の法定追認に当たらない場合について解説していきます。
①全部または一部の履行
その前に基本的な内容を確認。
コンビニでおにぎりを買った→売買契約は取り消せる
お金を払う/おにぎりをもらうということ
相手からしたらお金をもらった段階で「この人はおにぎりを買いたいんだ」ということが分かるのでわざわざ追認をする必要はないよね。なので法定追認にあたる。
おにぎりを受け取ったら(履行を受けたら)これも法定追認に該当する。
②履行の請求
ではこのパターンはどうだろうか?
コンビニでおにぎりを買った後「おにぎりをください」と請求した。(取消権者が請求する)
おにぎりを買ったことについて取り消さないと相手方は思う。
一方、相手方から「お金を払って下さい」と請求された場合(相手方の請求を受けた場合)、
この段階では取消権者は相手から請求を受けただけなので法定追認に該当しない。
⑤取得した権利の全部または一部の譲渡
おにぎりをもらえるという権利を取消権者が他の人に与えた。ということは「おにぎりをもらう気なんだな」ということがわかる。(法定追認にあたる)
一方、おにぎりを売ってお金をもらう権利を相手方が別の者に譲渡した場合、これは取消権者には関係ないので法定追認にはあたらない。
強制執行
相手方が強制執行(むりやりおにぎりを売る)を行ったとしても取消権者は何もアクションしていないのでこれも当然法定追認にあたらない。
以上、
・相手方の請求を受けた場合
・相手方が権利を譲渡した場合
・相手方が強制執行した場合
の3つに関しては法定追認には当たらない。
下記、司法書士試験の問題なのでちょっと難易度は違うかもしれないけど過去問表示してるサイトがあったので参考。
https://www.crear-ac.co.jp/shoshi-exam/minnpou125/
取消し権を行使できる期間
取消し権を行使できる期間というのは決まっている。
追認可能な時から5年、行為の時から20年経過すると時効によって消滅する。
追認可能になるとは
・制限行為能力者から行為能力者になる
・脅迫や詐欺の状態を脱した時
などのこと。
詐欺行為による契約から20年以上経ってから詐欺に気づいたとしても、既に20年経過してるのでこれは取消権を行使できないということ。
こちらも下記参考。
https://www.crear-ac.co.jp/shoshi-exam/minnpou126/
無効と取消しの比較
全部まとめると以下の表のようになる。

