土地家屋調査士

【土地家屋調査士・民法】物権変動

本日は物権変動について。

物権変動とは?

物権の発生・変更・消滅のこと。

建物を建て、Aさんの所有権が発生した。(発生

AさんがBさんに建物を売った。(変更

Bさんが建物を取り壊した。(消滅

物権変動の原因

物権変動は当事者の意思表示にのみによって効力を生ずる。

物権変動の時期

不動産売買のように特定物売買の場合、契約と同時に所有権が移転する。

しかし、特約(お金を払ったら所有権を移すなど)があった場合は、所有権は特約で定めた時期に移転する。

不特定物売買の場合は、目的物が特定した時(コーラを袋に入れた時など)に買主に所有権が移転する。

不特定物

個性がない物

不動産と動産

不動産

Aさんが土地をBさんに売った。

所有権はBさんに移る。

ただし、この土地はBさんのものであるという表示が必要。

外部から認識することができる一定の表象(公示)を伴わないとその物件変動を第三者に対抗(自分のものだと主張する)することができない。

要するにこの公示が「登記」になる。印籠的な。

※登記記録は誰でも見ることができる。

登記には「不動産がどこにあってどんな形をしているか」を記した表題部と、誰のものであるかを記した権利部に分かれている。

土地家屋調査士は表示に関する登記(表題部)をする仕事。

権利部の登記をするのは司法書士の役目。

土地家屋調査士と司法書士で登記の両輪と呼ばれている。

また例に戻る。

Aさんが土地をBさんとCさんに売った。(先にBさんに売った)

登記記録にはまだ所有者はAさんになっているので所有権を移さなければならない。

後から買ったCさんが登記を移した場合、Cさんが所有権を主張できる。

※登記を先に行ったから

不動産の場合は先に登記を備えた方が勝ち

※前のトピックでやったように、不動産賃借権は物権ではないが、対抗要件を備えた不動産賃借権は物権を取得したものにも対抗できる。賃借人保護のためだったね。

177条の「第三者」

177条によれば、不動産に関する物権の得喪・変更は登記をしないと「第三者」に対抗することができないとされている。

Aさんが土地をBさんに売り、さらにCさんに売った。

上の例では登記を先に備えたものが勝つんだったね。

Cさんが第三者だった場合、「当事者」であることは関係ない。

AさんとBさんの間の当事者間では登記の有無は関係ない。

第三者

当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有するもの。

欠缺

ないこと

「あなたは登記がない(欠缺)でしょ?だから私のものだよね」と言える。

第三者にあたる例

①所有権取得者

②差押債権者

③対抗要件を備えた賃借人

④単純悪意者

第三者に当たらない例

①不法行為者、不法占拠者

②無権利者

※①②に対しては登記をしてなくても権利を主張することができる。(相手に権利がないから)

③所有権が転々移転した場合の前主・後主の関係にあるもの

Aさんが土地をBさんに売った場合、BさんはAさんに対して登記がなくても自分のものだといえる。(当事者だから)

さらにBさんが土地をCさんに売った場合、CさんはAさんに対して所有権を主張することができるか?

→CさんはAさんに対して登記がなくても所有権を主張することができる。

前主(Aさん)・後主(Cさん)なので。

BさんができたのにCさんができないのはおかしいよね、と。

④背信的悪意者

悪意を持って権利を主張する人。(いわゆる日本語の悪意

第三者にあたる単純悪意者(知っていた)とは違う。

AさんがBさんに土地を売った。

その後、AさんはCさんにも土地を売った。

しかしCさんが買った目的はBさん(第1買主)に高値で売りつけるためだった。

この場合、Cさん(第2買主)は背信的悪意者にあたる。

なのでBさんは登記がなくても所有を主張することができる。

信義に反するからCさんを守る必要がないから

・背信的悪意者からの転得者

上の例で、CさんはさらにDさんにその土地を売り、Dさんは登記を備えた。

BさんはDさんに所有権を主張することができるか?

この場合はDさんに落ち度がないので第三者にあたる。

つまり登記が対抗要件となり、先に登記しているDさんに対しては所有権を主張できない。

※Dさん自身が背信的悪意者と判断されればBさんの勝ち

⑤一般債権者

一般債権者の権利は弱い。

⑥詐欺により登記の申請を妨げた者

AさんがBさんに土地を売った。

登記を移そうとしたらCさんが「私がBさんの相続人です」と詐欺をして登記を横取りした。

この場合、当然BさんはCさんに対して所有権を主張することができる。

⑦他人のために登記を申請する義務を負う第三者

登記申請を依頼された司法書士のこと。

あくまで登記のつなぎ役なため。

※⑥⑦は不動産登記法5条に列挙される者。

対抗要件が問題となる具体的場面

多くの場合は二重譲渡の場面で対抗要件が問題となる。

取消しと登記

制限行為能力者が単独でした契約や、錯誤による契約、詐欺または脅迫によって締結された契約については、表意者がこれを取り消すことができる。

AさんがBさんに土地を売ったけど、「やっぱ取消しますね~」とすること。

取消しは取り消された場合は意思表示の当初に遡って無効になる。

ただし、AさんがBさんに土地を売った後、BさんがCさんに売ってからAさんが「やっぱりBさんとの取引を取消します」といった場合、Cさんの立場が不安定になる。

取り消されるとAさん(表示者)に所有権が戻る(復帰的復権変動)

取消し前の第三者との関係

Bさんとの契約取消し前にCさんが現れてるから問題。

上の例の場合、CさんはAさんに所有権を主張することができるか?

まず取消したらBさんは遡って無権利者になる。

つまりCさんは何の権限もないBさんから土地を買ったということになる。

そしてCさんも無権利者ということになる。(無権利者から買ったので)

なのでAさんとCさんは対抗関係に立たない。

Aさんは登記無くしてCさんに所有権を主張することができる

例外

錯誤と詐欺の場合は、善意かつ無過失の第三者に対しては取り消しを対抗することができない。(第三者保護のため)

つまり善意無過失の第三者は登記なくして所有権を主張することができる。

先の例だと、AさんとBさんの取引が錯誤or詐欺で、かつCさんが善意無過失だった場合、登記がなくてもAさんに所有権を主張することができる。

あくまでも取消し前の第三者との関係ということに注意

取消し後の第三者との関係

AさんがBさんとの取引を取消した。

Bさんは取消した後にもかかわらずCさんに土地を売った。

二重譲渡と殆ど同じ形になる。

つまり登記を具備しなければいけなくなる。

先に登記をした方が所有権を主張することができる。

解除

いったん締結された契約の拘束力を消滅させる意思表示のこと。

AさんとBさんの間で土地の売買契約を行ったがBさんがお金を払わない。

Aさんは契約をなかったことにできる(解除

通常は契約当初に遡って契約の拘束力を消滅させる効力(遡及効)が生じる。

この場合遡って所有権がAさんに戻る。

解除後の第三者との関係

先の例だと解除した後にもかかわらずBさんがCさんに土地を売った。

こちらも二重譲渡があったものと同じ形になる。

なので登記を先に備えた方が所有権を主張することができる。

解除前の第三者との関係

取消し前の第三者は登記の有無は関係なかった。

取消したら表意者のものだが、表意者に錯誤or詐欺があり第三者が善意無過失の場合は第三者が所有権を主張できる。

解除の場合も同様に第三者を保護する規定が置かれているが、第三者に登記が必要であるとしている。

つまり第三者が登記を備えていなければAさんに対して所有権を主張できない。(Aさんの勝ち)

解除前に現れた第三者は登記が必要