財産法は物権と債権に分類される。
※債権は業務に直接関係がないので土地家屋調査士試験としてはほぼ出ない
土地家屋調査士では特に不動産の物権変動が重要となる。
物権総論
物権:物に対する権利
債権:人に対する権利
債権は第三者に主張できないが、物権は第三者にも主張できる(これは自分の物だと)
一つの物に対して同一内容の物権は成立しない。
つまり、物は誰か一人の物だよということ。(物権の排他性)
物それ自体は一個の独立した物でなければならない。
一個の物に同一の内容の物権は一個しか成立しない。これを一物一権主義という。
例外
①一筆の土地の一部について時効による所有権の取得が認められることがある。
※時効のところでやったトピック。
一筆の土地の半分をBさんが占有していた場合、時効になればBさんのものになる。
土地家屋調査士が分筆を行い、Aさんの土地を二つに分け、その後所有権の半分をBさんに移転する。(所有権移転は司法書士の仕事)
②倉庫内にある商品を一括して債権担保のために譲渡することは認められている(譲渡担保)
※土地家屋調査士の範囲ではない
一筆の土地の一部を売買により取得した者は、売り主が所有権移転登記をする前提としての土地の分筆登記を申請しない場合、債権者代位によりその土地の分筆登記を申請することができる。
土地を買う側も分筆登記申請を行うことができるということ。
ただし、地役権は一筆の一部に設定できるため分筆する必要がない。なので地役権者は保全する債権がないので代位して分筆することができない。
物権の種類
物権はオリジナルのものを作れない。一方、債権はいくらでもオリジナルなものを作れる。
所有権 その物の所有を主張する権利
占有権 専有してるだけで主張することのできる権利
用益物権 その物(土地など)を使うことができる権利
・地上権 その土地の上を使うことができる権利
・永小作権 その土地を耕すことができる権利 ※試験には出ない
・地役権 その土地を通行することができる権利
・入会権(いりあいけん) その土地で漁をする権利 ※試験には出ない
担保物権
ー法定担保物権
・留置権
・先取特権
ー約定担保物権
・質権
・抵当権
太字が土地家屋調査士が扱うことの多い物権。
物権の効力
物権の所有権同士に矛盾が起きた場合、どちらに効力があるかを決める必要がある。
→対抗要件を具備したものが優先することになる。
不動産の場合、対抗要件は「登記」ということになる。
Aさんが持っている土地をBさんに売ったのみならず、Cさんにも売ってしまった。
実体上の所有権をBさんもCさんも持っていることになる。
Bさんの登記が早ければ、Cさんに対して「ここは自分の土地だ」と主張できるようになる。
※一つの土地に抵当権を付ける場合は登記が早いほうが優先される。
(遅れた方は後順位の抵当権者となる)
不動産の場合は「登記」が非常に重要ということ。
物権と債権の関係
物権と債権が競合する場合は、物権が債権に優先する。
物権は誰に対しても主張することができるから。
例外
債権の中でも対抗要件を備えた不動産賃借権は物権と同様の扱いを受ける。
なので先に対抗要件、つまり登記を行ったほうが優先される。
対抗要件を備えたとは?
・借地権:登記がなくても土地の上に借地権者が登記されている建物を所有する時
借地権が登記されている建物があれば、建物を立てるために土地を借りてるという内容を具備していなくてもOK。
Aさんの土地の上に借地権を登記した建物があれば、たとえAさんがCさんに土地を売ったとしても借地権を主張できる。
・建物の賃貸借:登記がなくても建物の引き渡しがあった時
借地借家法という、借りてる人を守る法律があるため物権に格上げしている。
物権的請求権
条文には無いが、占有権に占有訴権が認められているため、本権である物権にも物権的請求権が当然認められるとされる。
物権的請求権の行使には侵害者の故意、過失は問われない。
物権は誰に対しても主張することができるため。(善意でも悪意でも)
物権的返還請求権
目的物の占有を失った場合、その返還を請求する権利。
Aさんの所有する車がBさんに奪われた。
Aさんは「車は自分の物なので返して」と言うことができる。
Aさんの土地にBさんが無断で建物を建て、Cさんに貸した。
AさんはCさんだけでなく、Bさんに対しても物権的返還請求権を行使することができる。
※物権は誰にでも主張することができるため。
Bさん、Cさんの過失の有無は問われない
物権的妨害排除請求権
所有物が侵奪以外の方法で違法に侵害されてる場合、妨害物の除去や妨害行為の停止などの行為を求める請求権。
Aさんの土地にBさんの木が倒れている
Aさんが自分の土地を使えなくなっているため、Bさんに木の撤去を主張することができる。
物権的妨害予防請求権
妨害排除請求権の手前の話。
将来、物権に対する違法な妨害状態が生ずる恐れが強い場合に、その原因を除去して妨害を未然に防ぐ措置を講ずるよう請求する権利。
Aさんの土地にBさんの木が倒れそうになっている。
AさんはBさんに木が倒れないよう措置を講ずる主張をすることができる。