今日は時効について。あと◯日で時効になってしまう。
とかドラマとかでやってますよね。

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時効とは?
時効には2種類あります。
①取得時効 期間の経過により権利を取得する場合
②消滅時効 期間の経過により権利・義務が消滅する場合
時効の大義名分としては
①継続した事実状態を尊重しようよ。
②権利の上に眠るものは保護に値しないよ。(止める手立てはあったのにしなかったのでもういいでしょと)
③権利関係の立証の困難を救済すること。
がある。
時効制度の法的構造
時効が完成する条件。
①一定の事実状態が一定期間継続すること。(時効の完成)
②当事者が時効を援用することが必要
時効の効果を希望すること。意思表明。
当事者が援用しない場合は裁判所がこれによって裁判をすることができない。
→時効の利益を享受することを潔しとしない当事者の意思もあるため。
「自分はいつか絶対このお金は返すんだ!」みたいな。
つまり自動的に発生するわけではない。
そしてその効果は援用した者についてのみ生じる。(援用の相対効)
Aさんの債務者(Aさんからお金を借りてた)Bさんが死亡し、CさんとDさんがその債務を相続した。
その後、消滅時効が完成した場合、Dさんだけが消滅時効を援用した場合、援用の相対効となり、効力はDさんにしか発生しない。
※全員に発生するものは絶対効という

なのでこの時Cさんは無関係。(Aさんに恩を感じていてCさんは絶対借金を返すと思っていたなど)
それぞれで意思は異なるため。
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
取得時効の場合は占有、または財産権の行使の時。
土地だったら住み始めた時からということ。
消滅時の場合は権利を行使することができる時。
援用権者
保証人、連帯保証人、物上保証人など、
要は関わっている人だね。
一方、一般債権者は立場が弱いので援用権者としては否定されている。
また、土地上の建物賃借人に関しては、土地の問題の場合は建物は関係ないということで援用権者としては否定されている。
時効の利益の放棄
時効の利益を受けませんということを表明すること。
「いつになろうが、借りたお金は必ず返すよ」など
要件
①時効完成後であること
時効の利益はあらかじめ放棄することができない。
もしあらかじめ放棄できるのであれば、お金を貸す時に「私は消滅時効を援用しません」という書式にサインを書かせることが想定されるため。
貸す側に有利になってしまうということ。
②放棄者が時効完成を知っていること
時効が完成してもそれでも放棄するということなので。
③時効利益を処分する能力・権限があること
効果
①相対効(個別に発生するもの)
援用の場合と同様、各自が判断すべきだから。
②放棄後、新たに時効期間が経過する
一度放棄した時効が別の時効の進行を妨げることはできない
時効完成を知らずに時効利益の放棄をした場合
時効完成を知らないで債権者に対し支払猶予を乞う場合。
債権者としては「あ、この人払う意思あるんだな」と思うよね。
にもかかわらず、債務者が改めて時効を援用(支払猶予を乞うただけで消滅時効を放棄したわけじゃないよ)して来た場合、

いったん支払いの意思を債権者に示した以上、信義則からみて見てそれと矛盾する時効の援用をすることはできない。
相互に相手の信頼を裏切らないように行動すべきであるという法原則
取得時効
所有権の取得時効と所有権以外の財産権の取得時効がある。
所有人の所有しているものが自分の所有物になるということ。
一筆の土地の一部であっても取得時効の対象となりうる。
Aさんが持っていた土地の東側半分をBさんが占有を続けた。
この東側半分をBさんのものとすることができる。
→分筆登記によって東側半分をBさんの土地というように登記する。(権利登記は司法書士)

ただし、建物に関しては土地の分筆のように分けることができないため、一部についての取得時効の成立は認められない。
※区分建物としての独立性を備えていればOK
マンションのような一つ一つ独立したドアがあるような建物
所有権以外にも用益物権(地上権・永小作権・地役権など)、賃借権、質権も取得時効の対象になる。
要件・効果
①他人の物を占有すること
自己の物でも構わない。
②所有の意志を持って占有すること
③平穏かつ公然に占有すること(隠し事のない状態)
②③は証拠ではなく推定される。取得される方が反証を出した場合ひっくり返される可能性もある。
これらを満たしたうえで
④
・占有開始時に占有者が善意無過失の場合は10年(自分の土地だと思って他人の土地を占有していたケース)
・悪意有過失の場合は20年占有を継続すること(自分の土地でないことを知っていた場合)
無過失は推定されない。なので無過失であることはちゃんと言わなくてはいけない。
無過失さえ立証できたら後は相手側の反証を待つ。
善意無過失は占有の始まったときに判断する。
なので占有開始後に悪意に変わっても影響はない(10年で時効は成立する)
※占有開始時に善意無過失であることが大事
占有の承継者(親から子など)がいた場合、最初の占有者が善意無過失だったかどうかで判定する。
最初の占有物が悪意だった場合、承継者が善意だったとしても時効までは20年かかる。

ただし、自分の占有のみを主張するパターン、前の占有者の占有も合わせて主張するパターンを選択することができる。
この場合、承継者は自分の占有のみを主張した場合、10年で時効は成立する。
親が善意だった場合、承継者が悪意だったとしても前の占有者が占有を始めてから10年で時効が成立する。

⑤時効の援用の意思表示をすること
これらが全て揃うと、占有開始時点から原始取得者として制約のない完全な所有者であったことになる。
つまり足を踏み入れた時から所有者であったと遡及する。
※援用した日からではないので注意
何の権利もないまっさらな土地として取得するということ
Aさんが付けていた抵当権なども無くなる。
消滅時効
例えばお金を借りていて一定期間を過ぎたら返さなくてもよくなる。ということ。
債権という権利義務が消える。
債権の他に所有権以外の財産権(地上権、地役権など)が消えることもある。
所有権は時効によって消滅しないので注意。
さらに、所有権に基づく物件的請求権も同様に時効によって消滅しない。
要件・効果
①権利不行使の状態が一定期間継続すること
お金を貸しているにも関わらず「返して」と言わなかったということは権利の上に眠っていることになるので消滅させてもいいよねということ。
・債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年、または権利を行使できる時(客観的起算点)から10年
・債権または所有権以外の財産権の消滅時効期間は20年
②時効の援用の意思表示をすること
これらを満たすと権利が遡及的に消滅する(さかのぼって無かったことになる)
消滅時効の起算点
1、確定期限付き債権
◯月◯日になったお金返してね。といったパターン。
通常は主観と客観(権利を行使できることを知った時とできる時)は一致する。
◯月◯日になった時から消滅時効が動き出すということ。
なので知った時と行使できる時は一緒になる。
2、不確定期限付き債権
試験に合格したらお金を返してね。といったパターン。
合格した時から客観的起算点(権利を行使できる)はスタートする。
合格したことを知らない場合、主観的起算点(権利を行使できることを知った)は動かない。
債権者側はいつ合格したかわからないから、それを知った時から動き出すということ。
3、期限の定めのない債権
お金を貸してる側(債権者)が返せと言ったら返す。といったパターン。
原則としては主観も客観(権利を行使できることを知った時とできる時)も債権成立の時と一緒。(契約成立の時から返せと言えるから)
例外
・消費貸借に基づく返還請求権
使うための貸し借り (100万円借りたので100万円返す(同じお札でなくてもよい))
使う期間が必要なため(そもそも使うために借りたので)相当の期間が経過している必要がある。
・債務不履行に基づく損害賠償権
本来の債務の履行を請求することができることを知った時。
「あ、これ相手にお金返せって言える権利あるじゃん!」と気づいた時。
本来の債務履行を請求できる時が起算点になる。
・不法行為に基づく損害賠償請求権
被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時
被害や加害者を知らないとスタートしない。(請求のしようがない)
期限の利益喪失条項のある場合
一つの債権を分割して払う契約
債権者が残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合、その時から全額について消滅時効が進行する。

通常は割賦の一つ一つについて消滅時効が適用されるが、全部払えと言われたら全額について消滅時効が進行するということ。
消滅時効と除斥期間との比較
除斥期間:一定期間内に権利を行使しないと権利自体が消滅してしまうというもの
消滅時効:援用をしないと効果が出ないもの
例えば買った家に欠陥があった場合、1年以内だったら解除権がありますよ。というのが除斥期間。
消滅時効の場合は援用が必要だが、除斥期間の場合は不要。
また、更新や遡及効に関しても除斥期間には無い。
時効の更新
時効の進行中に、時効期間をそのまま進行させるのは妥当ではない一定の事情が発生したことを理由にそれまで経過した期間を無意味なものにすること。
要は新しい時効の期間を定めましょうということ。
時効の更新が起こる条件
裁判上の請求など
あの人お金返してくれませんと裁判上に請求
※確定判決あるいは同一の効力を持つものによって権利が確定したときに限って効力が生じる。
つまり負けたり取り下げたりすると時効は更新しない。
訴えが却下・棄却・取り下げられた場合は時効の完成猶予の効力のみ生じる。
勝訴した場合は訴えを提起した時点から時効の更新の効力が生じる。
強制執行手続きなど
強制執行されたら時効は更新される。
裁判所の請求、強制執行手続きはどちらも債権者(不利益を被る側)がする。
承認
権利者に対して、その権利の存在を知っていることを表示すること。
こちらは債務者側がする。
承認にあたるもの
・債務の一部弁済(少額でも返すとそこから時効が更新される)
・支払猶予の申込み(債権があるということを承認しているとみなされる)
・利息の支払い(これも承認にあたる)
・保佐人・補助人が同意を得ずにした債務の承認
時効の更新の効果
更新事由が終了した時から、時効は振り出しに戻って新たに進行する。
9年11ヶ月まで経って時効まであと1ヶ月でも更新されてしまう。そこからまた10年待たなくてはダメ。
更新は相対効なので、援用の意思表示は個人の承認による。
絶対効となる例外
・地役権の不可分性
一定の目的の範囲で他人の土地を自分の土地のために利用する権利
取得しやすく消滅しにくい権利。
地役権を複数の人で持っている準共有の場合、ある人に更新事由が起きたら(消滅時効が降り出しに戻ったら)、他の人にも更新の効果が及ぶ。
なので例外的に絶対効となる。
・保証債務における主たる債務者への請求
AさんがBさんからお金を借りているが、Aさんが返せない場合、保証人のCさんが返すことになるが、この契約はそれぞれ別々になっている。
債務者に対する履行の請求の更新の場合は絶対効となる。
つまりAさんが更新したらCさんとの契約も更新される。
なので保証人Cさんにも効力は生じる。
ドラマでよく見るやつだよね、保証人になって借金を背負ってしまうあれ、、。
時効の完成猶予
10年だった時効が10年6ヶ月になるなど、時効の完成が遅れること。
時効の更新を困難にする事情が発生した場合、それが消滅するまで時効が完成しないようにする。
時効の完成猶予事由
①未成年者・成年被後見人に対する時効の完成猶予
時効期間満了前6ヶ月以内において、未成年者または成年被後見人が法定代理人を有していなかった時、時効の更新をするのは困難。
法定代理人がいないと制限行為能力者は決める権利がないよと。
自らが行為能力者になった時、または法定代理人が就職した時から6ヶ月を経過するまでの間は時効は完成しない。
②財産管理者に対する未成年者・成年被後見人の権利の時効の完成猶予
③夫婦間の権利の時効の完成猶予
④相続財産に関する時効の完成猶予
⑤天災・事変による時効の完成猶予
やむを得ない事情なので完成猶予となる。
障害の消滅した時から3ヶ月を経過するまでの間は時効は完成しない。
⑥仮差押・仮処分による時効の完成猶予
権利を差し押さえるために行っているので、その行為から6ヶ月を経過するまでの間、時効は完成しない。
⑦催告による時効の完成猶予
(裁判外で)お金を返してと言う(催告)と、催告後6ヶ月の間時効の完成が猶予される。
催告の後に再度催告を繰り返しても、完成猶予の効力は繰り返されない。
つまり一度しか意味がない。ここは大事なポイント。
⑧協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
債権者と債務者の間で協議を行う旨の合意を書面で行う場合。
話し合う気があるということなので、協議の間は時効の完成が猶予される。
猶予中に再度協議を行う旨の合意を書面で行った場合、再度の合意であっても時効の完成猶予の効力を有する。
※ここが催告とは違うポイント
催告した後に協議をした場合は?
→最初の催告が有効となる
協議をしてる間に催告した場合は?
→最初の協議が有効となる
なので後にしたことが有効になるのは協議の後に協議の合意をした場合のみ。

