今回は測量作業における注意点に関して。
測量作業における注意点
土地の立入り・障害物の除去
測量では、測量法によって他人の土地に立ち入ったり、障害物を除去したりすることが認められている。
※基本測量だけでなく、公共測量においても準用されている。
あらかじめ土地占有者に通知し、身分を示す証明書の原本を携帯する必要があり、やむを得ず障害物(植物、垣、柵)を除去する必要がある場合は、あらかじめ所有者または占有者の承諾を得る必要がある。
※身分証明書のコピーではダメ
作業規定の準則
・法令遵守
・作業者の安全の確保
・作業計画立案
道路交通法
道路の使用許可。
道路において工事、もしくは作業をしようとする者。
警察署長の許可を受けなければならない。
道路法
道路の占用の許可。
道路に工作物(測量標など)を設ける場合。
道路管理者の許可を受けなければならない。
※交通量が少なく交通の妨害となるおそれがない場合でも申請が必要になる。
※作業計画機関が所有する道路において作業をする場合でも道路使用許可の申請は警察署長に対してするものなので申請が必要。
作業計画機関から貸与された図書や関係資料を利用する際には紛失・損傷しないように注意しながら作業を実施しなければならない。
※個人情報の観点もある
作業後に使用しなかった材料の撤去・周囲の清掃は当然にする。
※一般的なマナーの問題も出題される。(常識的な範囲)
特に、原状回復として空中写真測量で使われる対空標識の撤去の問題が出題される。
設置した対空標識は、撮影作業完了後、速やかに原状を回復するものとする。
作業中に住民から苦情がきたり、土地立ち入りの許可が得られなかったりトラブルになった場合、作業責任者および測量計画機関に報告するとともに、対処方法について指示を得る。
測量の基準
測量では点の位置を観測し、示す必要がある。
地球上の点の位置は、地理学的経緯度と標高(平均海面からの高さ)で表示すると定められている。
ただし、GNSS測量では地心直交座標(地球の中心からの高さ)で示すことができる。
地球の形状
地球は完全な球体ではなく、球体を上下に押しつぶした回転楕円体となっている。
地球上の位置を緯度、経度で表すための基準として、地球の形状と大きさに近似した回転楕円体が用いられるが、この回転楕円体を準拠楕円体(法律で基準として定められた回転楕円体のこと)という。
赤道半径と極半径の比率によって回転楕円体の形状が定められるが、日本ではその比率として国際的な決定であるGRS80(Geodetic Reference System 1980)を準拠楕円体として採用している。
緯度・経度
赤道面と並行の左右の線を平行圏といい、南極点と北極点を結ぶ上下の線を子午線という。平行圏は緯線といい、子午線は経線と呼ばれる。
緯度は0~90°(赤道が中心)
経度は0~180°(イギリスが中心)
日本は北半球に位置するため、南側の緯度が低く、北側の緯度が高い。
また極東に位置するため、西側の経度が低く、東側の経度が高い。
標高
平均海面からの高さを標高という。
海面は常に形を変えている。その平均的な状態を陸地内部まで延長した仮想の面をジオイドという。
ジオイドは重力の方向と直交しており、地球の形に近似した回転楕円体にたいして凹凸がある。
ジオイドから地表面の高さを標高ということにしている。
準拠楕円体(GRS80)からジオイドまでの高さをジオイド高という。
準拠楕円体(GRS80)から地表までの高さを楕円体高という。
つまり標高+ジオイド高=楕円体高。
この高さは何か?という問いが頻出。
GNSSでは楕円体高までは計算で出すことができる。(地表-準拠楕円体)
ジオイド高を別途測り、楕円体高から引いて標高を出す。
※標高を直接観測はできない
地図の投影法
球体である地球の表面を平面に描くための技術を投影法という。
日本における平面直角座標系は横メルカトル図法の1つであるガウス・クリューゲル図法を用いている。
これは、原点に円筒を巻き、位置を示した上で円筒を切り開く正角横円筒図法である。
※距離は正確に表現できないが角度は正角に表現できるもの
原点を通る子午線は正しく図示できるが、東西に離れるに従って距離の誤差が増大していく特徴がある。また、緯線と経線は必ず直交し、その他の角度も正しく反映される。
平面直角座標系
平面直角座標系では原点を通る子午線をXで軸、原点を通り子午線と直交する平行圏をY軸とし、原点の座標値をXで=0m、Y=0mとして定める。
・19の座標系
日本全体に19の範囲を設定し、それぞれに原点をおいている。
※原点を多く置くことによって誤差を軽減させている
・縮尺係数
距離の誤差を抑えるため、原点からの東西方向の距離を縮めようとしたもの。
座標原点に0.9999の縮尺係数を与え、東西方向に離れるに従って大きくなっていき、原点からY座標が90km(90,000m)になるときの縮尺係数を1.0000としている。
90kmを超えると1.0000以上になるが、130km(1.0001)までで終わり。それ以上だと他の原点が出てくる。
地心直交座標
GNSS測量では地心直交座標であるITRF94(International Terrestrial Reerence Frame)を採用している。
地球の中心に原点があるような3軸の計算結果が観測される。
地球の中心からの高さと平均海面からの高さは異なる。
地心直交座標の座標値の計算によっても、準拠楕円体からの高さである楕円体高までしか求めることはできず、標高を直接測ることはできない。
そのため、国土地理院が影響するジオイドモデルより求めたジオイド高を楕円体高から差し引くことで標高を得る必要がある。
基準点成果情報
測量の基準となる基準点には、基準点測量の測量成果である基準点成果情報(成果表)があり、インターネットでも公開されている。
基準点成果情報には緯度・経度や平面直角座標系の位置、ジオイド高や標高が書かれている。
この基準点成果情報を参考にし、基本測量や公共測量を行うことになる。
測量士補試験では、基準点成果情報から、基準点の平面直角座標系の符号(+-)と縮尺係数を求める問題が出題される。
過去問
まず着目点は2つ。
①
緯度、経度が原点よりプラスorマイナスを把握。
原点より小さければマイナス、大きければプラス。
この場合は緯度(X軸)はマイナス、経度(Y軸)はプラスということになる。
②
Y軸の距離に着目。
90,000m(90km)より短ければ0.9999の縮尺係数、それより大きければ1.0000以上になる。
この場合は90,000mより短いので1.0000未満。
以上を鑑みて、答えは4になる。