契約各論の続き。
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消費貸借
金銭その他の代替物を受取り、これと同種・同等・同量の物を返還することを約束することによって成立する契約。
使うために借りるということ。
10万円貸して10万円返ってくるなど。返す時は1000円札100枚でもよい。(同価値だから)
無利息の場合は無償・片務・要物契約だが、利息付きの場合は有償・片務・要物契約というのが特徴。
書面や電磁的記録をもって約束することによっても成立させることができる。(諾成的消費者貸借契約)
返還時期の定めがあれば期間満了時に終了する。ない場合は貸主は相当の期間を定めて返還を請求することができる。
借主はいつでも目的物を返還することができる。
借主が死亡した場合、契約は相続人に承継される。(貸主が死んでも相続人に承継される)
どちらが死んでも承継されるということ。
※使用貸借の場合は借主死亡の場合、契約は終了する。
使用貸借
無償で物を貸すこと。お金を取ると賃貸借になる。
無償・片務・諾成契約
要は同じものが返ってくるということ。
親が自分の持っている土地に子供に家を建てさせるのは使用貸借。
借主が死亡した場合、使用貸借は終了する。(使用貸借のみ)
※承継されない。
賃貸借
賃料の支払、貸した物の返還を約束することによって成立する契約。
有償・双務・諾成契約
不動産賃借人の地位を強化することが図られており、これを不動産賃借権の物権化という。
※賃借人に債権としての保護しか与えられないのでは社会生活の安定・向上を害する結果となる恐れがあるため
不動産賃借権の物権化の帰結
物権化
①不動産の賃貸借について、これを登記した時はその不動産について物権を取得した物、その他の第三者に対抗することができる。
※ただ、ほぼ登記はない。登記請求権もない。
②建物の所有を目的とする土地の賃貸借の場合には、登記がなくても借地上に自己名義で登記されている建物を所有していれば借地権を第三者に対抗することができる。(借地借家法)
③建物の賃貸借の場合は、登記がなくても建物の引渡しがあれば借家権を第三者に対抗することができる。(借地借家法)
賃借権の時効取得
・土地の賃借権
①土地の継続的な用益という外形的事実が存在し②賃借の意思に基づくことが客観的に表現されている場合、土地賃借権の時効取得が認められる。
・建物の賃借権
建物の継続的な用益による時効取得が認められると解される。
要件・効果
賃貸人の義務
①目的物を使用・収益させる義務
②契約終了時の目的物返還義務
③修繕義務(貸してる人が直さなくてはならない)
④費用償還義務
・必要費
賃借人は直ちに賃貸人に償還を請求することができる。
※借りてる人が直した場合は賃借人に請求できますよということ。
・有益費
賃借人は契約終了時に目的物の価値の増加が現存している場合に限り、賃貸人の選択に従い、支出した金額または増加額のいずれかを賃貸人に対して請求することができる
建物の価値を上げた場合は貸してる人に請求できるということ。
賃借人の義務
①賃料支払い義務
②目的物の保管および目的物返還に関する義務
賃借人は目的物を善良な管理者の注意をもって保存することを要する。(善管注意義務)
借りてるものはちゃんと管理しようねということ。
また、賃貸借が終了すれば賃借人は賃借物を返還しなければならない。その際、目的物に付属させた物を収去する権利とともに義務を負う。
返す時は綺麗に返しましょうと。
存続期間
賃借権の存続期間は民法上最長50年とされている。これより長い期間を定めても50年に短縮される。
短い期間に関しては制限はない。
借地権も民法の規定では最長50年。
ただし、50年経つと建物を収去しなければいけないことになるため、借地借家法では借地も借家でも制限なしになる。
逆に最短は借地は30年(これより短い期間を定めても30年)、借家は1年となる。(これより短い期間を定めると、期間の定めがない賃貸借とみなされる)
要するに民法の制限が撤廃されているということ。
敷金
借りる時に貸主側に渡すお金。
建物明渡請求権と敷金返還請求権は明渡義務が先履行(先に履行しなければいけない)。
つまり、建物を明け渡したら敷金が返ってくるので、敷金が返ってきたら明け渡すということはできない。(同時履行ではない)
当事者の変更
賃貸人の変更
Aさんが土地をBさんに貸している。(土地賃貸借契約を結んだ)
土地の所有権がAさんからCさんに移った場合、BさんとCさんの間には契約がないため、CさんはBさんに「返して」と言うことできるのか?
賃借人に対する目的物明渡請求
・新所有者の登記の要否
新所有者から賃借人に対して所有権を主張するにあたり、新所有者は登記が必要になる。
・新所有者からの明渡請求の拒絶
賃借人が新所有者に対して不動産賃借権を主張して新所有者からの明け渡し請求を拒むには、賃借権の対抗要件が必要になる。
①不動産賃借権の登記
②借地の場合は借地上の自己名義の登記ある建物
③借家の場合は家屋の引渡し
債権を物権化して借りてる人を守っている。
なのでBさんはCさんに主張することができる。
賃借人に対する賃貸人たる地位の主張
賃貸人の地位の主張をするには、所有権の登記が必要。(Bさんに賃料を払いなさいと言うために)
賃貸人の地位の移転に賃借人の承諾は不要。(Bさんの承諾はいらない)
敷金関係
敷金関係は新賃貸人に自動的に移転する。(AさんからCさんに移転する)
※賃借人保護のため
これが移転しないとBさんが可哀想なことになる(「Aさんに請求してよ」と言われてしまう)
賃借権の譲渡・転貸
・賃借権の譲渡
賃借人と譲受人との契約により、賃借人としての権利義務を全て譲受人に移転させること。
BさんはAさんから建物を借りていたが、賃借権をCさんに譲るということ。
賃料はB→AからC→Aになる。
・賃借物の転貸
賃借人が賃借物を第三者に貸すこと。
BさんはAさんから建物を借りていたが、建物をCさんに貸した。つまり又貸し。
賃料はB→Aとなる一方、C→Bともなる。
原則
賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権譲渡し、または賃借物を転貸することができない。
貸してる人の許可が必要ということ。
※賃貸人・賃借人間の個人的信頼関係を基礎とするため。
無断で譲渡や賃貸していた場合は、賃貸人は契約を解除することができる。
賃借権の無断譲渡・無断転貸による解除の要件・効果
・要件
①賃貸人の承諾を得ないで、賃借権を譲渡又は賃借物を転貸すること。
②第三者が賃借物を使用収益すること。
③背信行為と認めるに足りない特段の事情はないこと。
※夫婦で借りていて、夫がいなくなり妻だけになっても問題はないという判例がある
・効果
契約を解除することができる。
賃貸人の承諾があった場合の法律関係
BさんはAさんから建物を借り、Aさんの承諾をもらってCさんに転貸していた。
Bさんの債務不履行により賃貸借契約が解除された時はA-B間の契約は解消となるので、CさんもAさんに対抗することができない。
元の賃借人の関係が消滅したら転借人も対抗できないということ。
※Aさんを保護している
ただし、賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除しても、賃貸人の承諾のある転貸借には影響はない。
つまり合意解除をもって転借人に対抗することはできない。
A-B間の契約が合意解除になってもCさんに対抗できないということ。
※Cさんを保護している
敷金関係
敷金は特約がない限り、新賃借人に当然には移転しない。
Bさんの敷金はCさんには当然には移転しないということ。
Cさんが賃料を払わなかった場合、Bさんの敷金が使われることになる。なのでBさんはAさんに対して「敷金を返して」と言える。
CさんはAさんに敷金を入れる。
貸してるほうが移転した場合、敷金も移転するが、借りてるほうが移転した場合は敷金は移転しないということ。
賃貸借契約の終了
①民法の定める終了原因
・存続期間の終了
・解約申入れ(土地は1年、建物は3ヶ月の猶予期間を経て終了)
※次の住居を探すまでの猶予
・解除(債務不履行が生じた場合)
・賃貸目的物の全部消失
※どちらかが死亡しても賃貸借契約は消滅しない
解除について
①信頼関係の破壊の恐れが全く無い場合には解除することができない。
②信頼関係を破壊し、賃貸借契約の継続を著しく困難にした場合に「催告なくして」解除することができる。
※賃貸借契約は信頼関係の上に成り立っているということ
解除の効力について
将来に向かって終了する。(遡及しない。遡及するなら今までの賃料を返さなければいけない)
賃貸借契約終了の特殊な効果(特別法上の効果)
建物買取請求権
土地を借りてる人に与えられた特別な請求権
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がない時は、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に付属させたものを時価で買い取るべきことを請求することができる。
Aさんの土地をBさんが借りて建物を建てた。存続期間が終了し、Aさんが契約更新に応じない。
BさんはAさんにこの建物を買い取ってもらうことを請求することができる。買取と建物の明渡しは同時履行。
つまり「建物を買わないと土地を明け渡さないよ」ということ。
※契約更新がない時は、というのがポイント。
契約の更新を間接的に強制している。強行法規。
法令の規定のうちで、それに反する当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定
造作買取請求権
建物を借りてる人に与えられた特別な請求権
賃貸人の「同意を得て」建物に付加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいう(畳、エアコンなど)
建物賃貸借契約が終了する場合に、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作がある時は賃借人は賃貸人に対してその造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。
明渡しと同時履行ではない。「エアコンを買い取るまで部屋から出ていきません」と言うことはできない。
任意法規なので借りる時に造作買取請求権を放棄すると書いてあっても問題ない。
契約などによって変更することが認められている規定
請負
建物を建ててと工事会社に請負契約をする。建物ができたら報酬を支払う。
・請負人の義務について
請負人は原則として自由に補助者・下請負人等に仕事をさせることができる。(仕事を完成しさえすれば仕事完成義務を果たしたことになるので)
委任
その人に依頼して仕事をしてもらうこと。
当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方(受任者)がこれを承諾することによって成立する契約。
委任は自由に下請負人等に仕事をさせることができる請負とは異なる。(その人だから依頼しているので)
受任者は委任者に対して報酬支払を請求することができない。
※委任契約は無償が原則。委任は高尚なことという考えがある。
なので無償・片務・諾成契約だが、特約があれば有償・双務・諾成契約となる。(特約の方が普通)
委任契約の成立要件・効力
・要件
当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方(受任者)がこれを承諾
・効力
受任者の義務
①みずから事務を処理する義務(請負と異なる)
②善管注意義務(無償契約でも)
③付随義務(報告義務・受領物等の引渡義務)
委任者の義務
①特約がある場合の、報酬支払義務(無償委任が原則)
②費用前払義務(費用を要する時は前払いが義務になる)
③立替費用償還義務(必要な費用と利息の償還を請求できる)
④債務の弁済または担保供与義務
⑤損害賠償義務
委任契約の終了
各当事者は、いつでも委任契約を解除することができる。
ただし、相手方に不利な時期の解除や委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除した時は損害賠償をすることを条件に認められる。
もっとも、やむを得ない事由がある場合は損害賠償は認められない。
告知以外の委任の終了原因
①委任者の死亡・破産手続開始の決定を受けたこと
②受任者の死亡・破産手続開始の決定を受けたこと
※どちらかが死亡したら終了という意味では定期贈与と同じ。
ただし、後見開始の審判に関しては委任者は終了原因とはならない。(受任者は終了原因となる)
※任意代理と同じ
和解
当事者が互いに譲歩して、その間に存する争いをやめることを約束することによって効力を生じる契約をいう。
※試験には出ないがADR(裁判外紛争解決手続)の際に理解しておくのが有用
和解による確定効
和解後に当事者の思惑違いが判明しても錯誤の主張は許されない。ということ。
しかし、当事者が和解の当然の前提としていた事項や全く争いの対象としていなかった事項に思い違いがあれば、その部分に関する錯誤を主張して和解契約を無効とすることができる。
売掛金債権をめぐる争いで、ジャム150箱で代物弁済する和解が成立したところ、このジャムが粗悪品であることが判明した場合、錯誤の主張を認めた判例がある。
※前提が崩れたため