土地家屋調査士

【土地家屋調査士・民法】制限行為能力者制度とは?

はい、前回は意思能力の有無は外見からはわからないことが多いので

制限行為能力者(能力が不十分な人)の法律行為を取り消すことができると言いましたが、今回はその具体的な内容です。

土地家屋調査士試験に向けた民法の勉強開始土地家屋調査士試験は大きく分けて ①法律的な部分 ②数学(サイン・コサイン・タンジェント的な)を使った作図 の2つに分...

制限行為能力者制度の対象となる4つ

①未成年者

②成年被後見人

③被保佐人

④被補助人

の4つなんですが、

制限行為能力者はめっちゃ保護されてる!

というのがポイント。

行為が取り消された場合の効果

例えば制限行為能力者が売買契約を行ったとして、

その後この契約が取り消しになった場合はどうなるの?

お金はどのくらい返さなきゃいけないの?

ということなんですが、これは

利益を受けている限度(現存利益)においてのみ返還義務があります。

例を挙げます。

未成年者のトチオ君はお父さんに内緒でお父さんの大切なギターを10万円で売ってしまいました。

トチオ君はそのうち2万円を生活費、3万円をギャンブルに使い残りの5万円は手元に置いておきました。

ところが大切なギターを無断で売られたことを知ったお父さんは大激怒。

当然ギターを取り戻すためにトチオくんがギターを売った店に売買取消しの訴えをしに行きます。

ギターを取り返すためには当然売った10万円と引き換えな気がしますが、

実は返す必要のある金額は10万円からギャンブル代の3万円を引いた7万円のみ。

なんでギャンブル代は返さなくてええんや?

って話なんですが、

生活費

使わなかったら自分の財布から出してたよね?(だからその分得したよね?)

だから返そうね。

ギャンブル

自分の財布だったらやらなかった可能性、もらった金だからギャンブルしたのかもね。現存利益があるとは言えないので返さなくて良い。

ということ。

なんじゃそりゃ。

と思うんですがどうやらそれが民法のルールらしい、、。

ではそんな手厚く保護されてる制限行為能力者のそれぞれについて説明。

未成年

未成年者とは?

20歳未満の者。

当たり前だね。

が!

結婚してる未成年者は成年者として扱われる(成年擬制)らしい。

しかもその後離婚してもこの効果は失われない。

※これは私法関係についてのみ生じる。選挙権や喫煙・飲酒(公法)についてまでは当然適応されない。

法定代理人とは?

未成年者はめっちゃ保護されてる存在なので、法律上では未成年者の代わりに法定代理人(第三者)が未成年者の代わりに契約を締結します。

第三者と言っても基本的には親権を持つ者(父や母)が法定代理人になるけど、いない時は後見人(未成年後見人)が代理人になります。

原則

未成年者が法律行為をするためには法定代理人の同意を得なければならない。

親の同意を得て買ったらOK。同意がなかったら親(法定代理人)は取り消せる。

スマホの契約とか、未成年者は親のサインも必要だよね?つまりそういうこと。

さらに、未成年者本人も取り消すことができる。

未成年者最強、、。

例外

あまりにも未成年者が最強すぎるので、

契約する相手方としてはぶっちゃけ未成年者とは取引したくないですよね(あとから覆されたら面倒だし)

というわけで未成年者が単独で有効(要するに単独で成立すること)にできるケースがあります。

未成年者を守る必要がないパターン

1、負担のない贈与を受けた(1万円もらった/借りてた1万円をちゃらにしてもらった、など)

未成年者にとってはメリットしかないですよね?というわけでいちいち親(法定代理人)の許可はいらんよと。

許可がいるならお年玉とかも全部親の同意がいることになるからね、、。

ちなみに、未成年者が「貸してたお金を返してもらう行為」は貸してた元本が消滅する(不利益になる)のでこれにあたらない。

つまり貸してたということは返してもらう(例えば利子を付けてとか)権利が消滅するので未成年者にとって不利益だねということ。

しかしめっちゃ守られてるな未成年者、、。

2、処分を許された財産の処分

特定の使用目的(学費や授業料など)。この目的で親からもらったお金を処理するのはOK。

親からもらったお小遣いを使うのは親(法定代理人)の同意はいらない。

これはまあわかるね。

3、営業を許された場合の営業に関する行為

親(法定代理人)から許可を得ていた場合は営業(仕事、バイト)してもOK

いちいち確認するのは面倒だしこれもわかる。

4、法律行為の取り消し

前述のとおり、未成年者本人が取り消すことができる。

スーパーキャンセル、最強の人、それが未成年者。

法定代理人の権限

じゃあ未成年者の法定代理人(親など)の権限には何があるかというと、以下の通り。

・代理権:未成年者の代理として法律行為ができる

・同意権:未成年者が法律行為を行うことに対して同意を与えることができる

・取消権:未成年者が同意を得ないで行った行為は取り消せる

・追認権:未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った行為を認めることができる(取消しはもうしないよということ。取消し権の放棄)

※契約する相手からしたら未成年者の親に取り消されるかわからないので不安、、。

けど追認を受けたらもう取り消しされる心配はないなと安心できるというわけ。

成年被後見人

こちらは未成年と違い、成年してるけど(20歳以上)保護が必要な人。いわゆる障害者の方とかですかね。

厳密には、

成年被後見人

精神上の障害により自利を弁識する能力(物事の後先を考える能力)を欠く(全く無い)常況にあり、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者。

家庭裁判所の審判で認められた場合、成年被後見人になることができる。

成年後見人が代理人となるわけだけど。

未成年者と違って、「同意」(同意を与える)ことができないので注意。

(同意に基づく的確な行為が期待できないため)

ちなみに成年後見人がついている未成年者もありえる。(精神障害者など)

20歳になっても保護できるように準備しておくわけです。

そして成年後見人は法人でも複数でもOK(昔はダメだったみたい)。

成年被後見人の行為能力は取り消すことができる。

未成年者は法定代理人の同意がなければ取り消すことができたけど、こちらは一律に取り消すことができる。

要するに同意は意味がないということ。(めっちゃ保護されてるというわけ)

例外

日用品の購入、その他日常生活に関する行為(食品購入、ガス、水道利用契約)については取り消すことができない。

日用品購入に関しては、一番保護されている成年被後見人でも取り消しできないので被保佐人、被補助人も同様に取り消すことができない。

成年後見人の権限

ない:同意権(大事)

ある:代理権、取消権、追認権、身上配慮義務(成年被後見人の意思を尊重しましょうというもの)

後見開始の審判の取消し

後見開始の審判を受けた原因が消滅した時(障害などが治った場合)も家庭裁判所の審判が必要になる。(後見人であることの解消)

審判は4親等内の親族、後見人、後見監督人、または検察官の請求によって行うことができる

http://shinashakyo.jp/koken/pdf/shinzoku.pdfより

そしてあらかじめ言っておくと、今まで説明した未成年者、成年後見人とこれから説明する被保佐人、被補助人の間にはめちゃくちゃ大きな壁がある。

未成年者、成年後見人>>>被保佐人、被補助人

のように差がある。要は被保佐人、被補助人は守られてる度合いが低め。

被保佐人

被保佐人とは?

精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」な者で、家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者。

著しく不十分

一定の重要な法律行為を自分だけで行う判断能力が無いこと(全てではない)

※不動産を売るなど、重要な事に対しては保護してあげましょうというもの。

被保佐人は原則として「単独で」法律行為を行うことができる。基本的なことは普通の人とあまり変わらない。

なので取り消すことができる行為が「例外」になる。

13条1項各号に列挙されてる行為をするためには保佐人の同意が必要。

13条1項各号

重要な法律行為(お金絡み、不動産の売買や改築、訴訟、贈与など、これらの行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること)

→未成年者Aの法定代理人Bが被保佐人である場合など

(子供のための同意をするために保佐人Cの同意が必要ということ)

保佐人の権限・義務

・同意権

・取消権

・追認権(取消権の裏返し)

・代理権(保佐人は法定代理人ではないので通常代理権はないが、審判で代理権を付与されてる場合「特定の」法律行為について行うことができる)

被補助人

被補助人とは?

精神上の障害により事理を弁識する能力が「不十分」な者。で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者。

不十分

一番程度が軽い

※本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには本人の同意が必要。

補助開始の審判をなす場合には

①同意権付与の審判

②代理権付与の審判

③双方のパターン

がある。逆に言うと全部付けないのはダメということ。

・代理権のみが与えられた場合:被補助人の行為能力は制限されない。(つまり何してもOK)

・同意権が与えられた場合:補助人の同意を得ることが必要な行為に対しては被補助人の行為能力が制限される(何してもOKではない)

被保佐人と同様、13条1項各号に記載された中の「一部」に関して補助開始の審判を受ける。

(全ての同意権を有することはない、全てだと被保佐人と変わらなくなるため)

補助人の権限・義務

・同意権

・取消権

・追認権

※同意権が付与されてる場合に補助人に与えられた権限

・代理権

※補助人に代理権を付与した場合の権限

制限行為能力者まとめ

はい、ここまでをまとめるとこの表のようになります。

※保護者は全て複数でも法人でもOK

制限行為能力者と取引した相手方

ここまで制限行為能力者について説明してきたけど、

じゃあ実際に制限行為能力者と契約する相手方の保護に関してはどーなのよ?

ということで説明。

相手方の催告権

催告権

追認するのか、それとも取り消すのかについての返答を要求する行為

未成年者が成年になった後は本人に対して催告できる。

→返答がない場合、追認したものとみなされる(追認擬制)

判断能力はあるんだから無視するなら認めたものとするよと。

未成年のままだったら催告は法定代理人に対してなされる。本人には何もできない(未成年最強)

→返答がない場合、追認擬制。

これも法定代理人に判断力はあるでしょということで、無視するなら認めたものにする。成年被後見人も一緒。

要は判断能力はあるのに無視してるのはそっちが悪いよね?だから追認(OK)したものとみなすぜ。ということ。

被保佐人、被補助人に関しては、制限行為能力者である間も本人に催告することができる。

→返答がない場合は取消擬制(契約をなかったことに)となる。

こちらはそもそもの判断能力がないので(障害など)、一方的に追認するのではなく取消しにしましょうということ。

ちなみに行為能力者になった(判断能力が回復した)けど返答がない場合、これは追認擬制となる。

保佐人・補助人に対しては返答がない場合は追認擬制。こちらは判断能力はあるからね。

これも表にするとこんな感じ。

制限行為能力者の詐術

ざっくりいうと人を騙すような行為をしてた場合は取消しできんよということ。

行為能力があるかのように偽っていた場合、取り消すことができなくなる。

(法定代理人(保護者)も取り消すことができない)

黙秘だけでは詐術とまでは言えない。(未成年者ですか?と言われても黙っているなど)

他の行為や言動で相手を誤解させる行為は詐術に値する。

未成年者なのに契約の際タバコを吸っていたので成人かと思ったなど(そんなシチュエーションあるんか、、)

というわけで、制限行為能力者とその相手方に関する説明でした!

【土地家屋調査士・民法】不在者・失踪者今回は不在者や失踪者がいる場合の法的な取り扱いに関して説明します! https://tochikaokuchosashi.com/...