相続法のラスト。
Contents
遺言
一定の方式で示された個人の意思に、この者の死後、それに即した法的効果を与えようとする相手方のない単独行為。
遺言の能力
・未成年者
15歳で遺言することができる。
・成年被後見人
事理を弁識する能力の回復時において遺言するには、医師2人以上の立会いがなければいけない。
・被保佐人、被補助人
単独で遺言することができる。
遺言の方式
民法で定められた方式に従わなければ無効であるとされている。
※けっこうガチガチに決まっている
遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきものである。
また、共同遺言は禁止されている。
※遺言は自由に撤回できるが、片方だけ撤回などすると不明確になるため
普通方式
自筆証書遺言
・遺言者が遺言書をみずから作成(全文・日付・氏名を自書し、押印する)
※PCやワープロではダメ
※日付が重要
ただし、財産目録については自書が不要
メリット:費用がかからず、承認も不要
デメリット:内容が不明確になりやすく、方式違反も生じやすい、紛失、変造の恐れもある
公正証書遺言
・証人2人以上の立ち会いの下、公証人に遺言の趣旨を原則として口授する
メリット:自書できない者も利用できる上、専門家の関与により遺言内容の不明確や方式違反が少なく、紛失、変造の心配もない
デメリット:費用がかかるほか、証人が遺言内容を見聞きするため遺言の内容を完全に秘密にしておくことができない
秘密証書遺言
・公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨などを申述する
メリット:署名以外自書する必要が無い。遺言の内容を秘密にしつつ、紛失、変造の心配をなくすこともできる
デメリット:内容の不明確や方式違反が生じやすい点で自筆証書遺言と同じ
※秘密証書遺言の方式を欠いた(証人が1人足りないなど)ものであっても、自筆証書遺言の条件を満たしていれば自筆証書遺言としての効力は認められる
特別方式
緊急時遺言
・死亡危急者遺言
疾病などにより死亡の危急に迫った者が作成
証人3人以上の立会いの下、その1人に遺言の趣旨を原則として口授する
・船舶遭難者遺言
船舶遭難の場合に、当該船舶の中で死亡の危急に迫ったものが作成
証人2人以上の立会いの下、原則として口頭による
※人が少ないので2人でよい
隔絶地遺言
その所在が一般の交通から隔絶されているため、普通方式により遺言をなしえない者のための制度
・伝染病隔離者遺言
伝染病のため行政処分により交通を断たれた場所にある者が、警察官1人および証人1人以上の立会いをもって作成する
※人が少ないので2人でよい
・在船者遺言
船舶中に在る者が、船長または事務員1人および証人2人以上の立会いをもって作成
※基本は3人以上だけど、遭難した時と伝染病の時は2人でいいということ。
遺言の法定事項
遺言でのみ可能な行為
①未成年後見人・未成年後見監督人の指定
②相続分の指定またはその委託
③遺産分割方法の指定またはその委託
④遺産分割における担保責任の指定
⑤遺言執行者の指定またはその委託
⑥遺産分割の禁止(5年を超えない期間)
・遺言執行者
遺言の内容を実現するために相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務が与えれている者。
遺言執行者が権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対して直接にその効力を生じる。
遺言でも生前行為でも可能な行為
①認知
②推定相続人の排除
③一般財団法人の設立の意思表示
④祖先の祭祀を主催すべき者の指定
遺言の効力
遺言者の死亡の時から効力を生ずる。
遺言能力のない者(15歳未満など)の遺言は無効。所定の方式に従わない遺言も無効。
遺言の撤回
遺言者はいつでも遺言の方式に従ってその遺言の全部または一部を撤回することができる。
遺言を放棄でもよいし、新しい遺言を書くでもよい。
後の遺言の方が優先される。
遺言の撤回権を放棄することはできない。
「この遺言を撤回する気はない」と書いていても、その後にかかれた遺言が有効になるということ。
遺言の撤回行為が撤回された場合であっても、前の遺言に効力は復活しない。
最初の遺言は土地をAさんにあげるとしていたが、後の遺言ではBさんにあげるとしていた。
この場合、後の遺言が有効になる。
ただし、この「土地をBさんに上げる」という遺言を撤回した場合は?
→土地はAさんのものにはならない。
Aさんにあげるのであれば、「Aさんにあげる」という遺言を書かなければいけない。
ただし、撤回行為が錯誤、詐欺または強迫による場合に撤回行為が取り消された時は、前の遺言の効力が復活する。
「土地をBさんにあげる」というものが詐欺・強迫だった場合、前の遺言(Aさんにあげる)の効力が復活するということ。
遺贈
遺言により無償で財産を与えること。遺贈を受けるものを受遺者という。
※相続人ではない人にあげる行為
※贈与は貰う人の承諾が必要だが、遺贈は遺言によるので単独行為、相手の承諾はいらない
遺贈の種類
・特定遺贈
受遺者に特定の財産を与える遺贈
・包括遺贈
遺産の全部または一部の分数的割合を与える遺贈
※包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する
・単純遺贈
受遺者に何らの負担を課さない遺贈
・負担付遺贈
受遺者に負担として一定の義務を貸す遺贈
※受遺者は負担の内容とされた義務を履行しなければならない。ただし、遺贈目的物の価額を超えない限度でよい
遺贈の放棄
特定遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができる。また、遺贈の放棄は遺言者の死亡の時に遡ってその効力を生ずる。
もっとも包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するので自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3ヶ月以内に単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない。
遺贈義務者
原則として相続人が遺贈義務者となるが、遺言執行者が指定された場合は遺言執行者のみが遺贈義務者となる。なお、相続人が明らかでない時は相続財産管理人が遺贈義務者となる。
死因贈与との比較
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与。
「自分が死んだらこの土地をあなたにあげる」というようなこと。
遺贈と似ているが、単独行為ではない。
遺贈⇔死因贈与
法的性質:単独行為⇔契約
能力:15歳⇔20歳
代理:不可⇔可
方式:厳格に法定⇔遺贈の方式に関する規定は準用されない
遺留分侵害額請求:どちらも対象となる
撤回:いつでも可⇔書面による贈与であってもいつでも可(贈与と違うところ)
※書面による贈与は撤回できない。
相続させる旨の遺言
遺贈は放棄することができるが、相続の場合は遺産分割方法の指定の場合は相続そのものを放棄しなければならない。
配偶者の居住の権利
配偶者居住権
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利。
遺産分割または被相続人の遺言によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができる。
相続人が妻と子、遺産が自宅(2000万円)、預貯金(3000万円)の場合、妻は居住建物の他に預貯金500万円を取得し、子は預貯金2500万円を取得する。
ただ、これだと生活していくのに現金が足りない恐れがある。
そこで、妻が配偶者居住権(1000万円の価値があると仮定)を取得すれば、他に預貯金1500万円を取得できることになり、子は負担付きの所有権(1000万円)と預貯金1500万円を取得する。
取得
①遺産分割、遺贈、死因贈与
ただし、居住建物が配偶者以外の者との共有だった場合には取得しない。
②家庭裁判所の審判
・共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立している時
・配偶者が希望する場合で、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認める時
存続期間
終身。登記もすることができる。
ただし、遺産分割協議、遺言または家庭裁判所の審判によって期間を変えることも可能。
配偶者の権利・義務
・権利
居住建物の全部について無償で使用できる。
・義務
・善管注意義務
・譲渡禁止義務
消滅事由
・配偶者の死亡
・期間満了(設定していた場合)
・混同(所有権を取得した等。ただし共有者がいる場合には消滅しない)
・義務違反を理由とする消滅
・全部滅失等
配偶者短期居住権
遺産分割が終わるまでは住ませてあげましょうというもの。(最低6ヶ月間)
※登記はできない
権利・義務・消滅事由は配偶者居住権と同じ。
遺留分
一定の相続人に留保された相続財産の一定の割合であり、被相続人の生前処分または死因処分によって奪うことのできないもの。
本来、被相続人にはみずからの財産を自由に処分する権利がある。しかし、相続制度は遺族の生活保障および潜在的持分の生産という機能を有している。
要するに、最低限の物は相続人に残しましょうねということ。
遺留分権利者
兄弟姉妹以外の相続人、つまり
①子
②直系尊属
③配偶者
※兄弟姉妹には遺留分は認められない。なので兄弟姉妹は排除の対象とはならない。
①~③は遺留分がある。0にしたいなら排除するということ。
遺留分の割合
総体的遺留分
遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合
直系尊属のみが相続人である時は、被相続人の財産の3分の1であり、その他の場合には、被相続人の財産の2分の1
個別的遺留分
遺留分権利者が2人以上いる場合における各人の遺留分
算定は法定相続分による
Xさんが亡くなった。相続財産は3000万円
配偶者Aさん、子のB、C、Dさんが相続者
通常はAさんが2分の1、B、C、Dさんは6分の1ずつ相続できる。
ただし、Xさんが愛人Yさんに3000万円全て遺贈した場合、
3000万円のうち1500万円は総体的遺留分となる。
Aさんは2分の1の750万円、B、C、Dさんは250万円ずつが相続分となる。
遺留分の放棄
遺留分は相続の放棄と異なり、相続開始後はもちろん、相続開始前にも放棄することができる。
ただし、相続開始前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要とされている。
※自由に認めてたら相続人に放棄を強要する恐れがあるため
また、共同相続人の1人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分には影響を及ぼさない。
上の例の場合、Dさんが250万円を放棄したからといって、A、B、Cさんの分が増えることはない。
※放棄された遺留分は、被相続人が自由に処分できる財産が増加するということになるので、例えば遺贈を受けた者の取得分が増える、などが効果として現れる。
遺留分侵害請求権
遺留分を侵害された者およびその承継人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
先の例でお金ではなく3000万円分の土地しかなかった場合、愛人Yさんに対して金銭の支払を請求することができる。
なお、遺留分侵害額に参入する贈与は原則として相続開始前の1年間にしたものに限る。
Xさんが亡くなる半年前にYさんに3000万円を贈与したから遺留分が無くなってしまった、ということにはならないということ。相続開始前の1年間なら。
ただし、相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にしたもので、婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与の価額に限る。
長男にあげてしまったものを次男が主張することができるということ。
行使の方法・順序
遺留分権利者から相手方に対する意思表示によって行う。この意思表示は裁判上でも裁判外でも構わない。
相手方に到達した時に、遺留分侵害額請求の効力が生じる。
遺留分侵害請求を受けた受贈者または受遺者は裁判所に対して全部または一部の支払いにつき相当の期限の許与を請求することができる。
いきなり言われても困るので猶予をくださいねと。
※同時履行ではない。1500万円払わないと家がもらえないということではない
先に家をもらってそれを売って現金にして1500万円を払う。とすることができる。
遺留分侵害額請求権の対象となりうる遺贈・贈与が数個ある時は、次の順序による。
新しい方から負担、同じ時期なら価額の割合で折半
遺贈と贈与がある時
1年前に1000万円、遺贈で1000万円あげている。1000万円について遺留分侵害とされた。
受遺者が先に負担する(遺贈が先に負担)
※遺贈の方が新しいから
遺贈が数個ある時、または同時にされた贈与が複数ある時
受遺者または受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示した時はその意思に従う
遺贈と贈与が複数あった場合はまず遺贈を価額の割合に応じて調整、それでも足りなければ贈与の方で調整。
贈与が数個ある時
後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する
要は新しい方から処理していくということ。
遺留分侵害額請求権の期間制限
遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しない時は時効によって消滅する。
相続開始の時から10年を経過した時も同様に消滅する。
特別の寄与
相続人ではない被相続人の親族が、相続人に対して、特別寄与料を請求することができる制度。
例えば被相続人の死亡した長男の妻が被相続人の介護を行っていた場合など。
特別寄与料を請求できる者
被相続人の親族が請求することができる。ただし、相続の放棄をした者、欠格事由のある者、廃除によって相続権を失った者は請求することができない。
・要件
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたと認められること
・手続き
原則として協議による。協議が整わない時、または協議ができない時は家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができる。
この場合、家庭裁判所は審判で相続人に対して金銭の支払を命じる。
ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過した時、または相続開始の時から1年を経過した時はこの請求ができなくなる。
※遺産分割協議に入ってしまうため
額
家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求した場合は一切の事情を考慮して家庭裁判所が定める。
つまり具体的な額は決まっていない。
ただし、被相続人が相続開始の時に置いて有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
いくらなんでも相続人がもらえる額を超えることはないということ。
相続人が複数いる場合は、各相続人が相続分に応じて特別寄与料を負担する。
配偶者と子がいる場合は、2分の1ずつ寄与者に払うということ。