今回は担保物権に関して。
Contents
担保物件
債務者の債務不履行(お金を返せない)によって債権者が不利益を受ける危険を避けるため、あらかじめその債務の弁済を確保したもの。
・物権担保
債権者が債務者または第三者の財産の上に権利を取得し、債務不履行の場合にその権利に基づいて目的財産から優先的に弁済を受けることができる制度。
→一般的な担保。金払えないなら家を差し押さえます的な。
・人的担保
あらかじめ特定の第三者による弁済を確保しておく制度(保証人など)
→借金の保証人になったら逃げられて破滅、、。みたいなドラマあるよね。
担保物権の制度趣旨
債権者はそれぞれの債権額の比率に応じて弁済を受けるにすぎないのが原則(債権者平等の原則)
要するに一般債権者。
そこで、他の債権者に先立って債権の回収ができるようにと考えられたのが担保物件の制度。
とりっぱぐれの無いようにして自分だけは損しないようにしようということだね。
抵当権は登記なので第三者に対抗することができる。
抵当権を持ってる人にまず弁済されて、それでも残ったら一般債権者に比率に応じて分配される。
担保物権の性質
・付従性
債権が発生しなければ担保物件は発生せず、また債権が消滅すれば担保物件も消滅するという性質。
・随伴性
被担保債権が移転すれば担保物件もこれに伴って移転するという性質。
・不可分性
担保権者が債権全額の弁済を受けるまで、目的物の全部についてその権利を行使することができる性質。
・物上代位性
担保権者がその担保目的物の売却、賃貸、滅失または損傷によって債務者(または設定者)が受けるべき金銭その他の物に対しても担保権を行使することができるという性質。
担保としていた家が火事で燃えた場合、その火災保険に対しても権利を行使できるということ。
担保物権の意義
・留置権
・先取特権
・質権
・抵当権
を規定している。また、
・法定担保物権
一定の立法政策に基づき法律上当然に生じる担保物件(留置権、先取特権)
・約定担保物権
当事者の設定行為によって初めて生じる担保物件(質権、抵当権)
※土地家屋調査士の民法はこちらから出題
に分かれる。
担保物権の効力
①優先弁済的効力
先立って債権の回収を図ることができる効力。
先取特権や質権、抵当権に認められる。
②留置的効力
担保物権の権利者が、債権回収まで目的物を手元に留めておくことができる効力。
留置権や質権に認められる。
※抵当権には認められない。もしあったらその建物を銀行が使うことになる。せっかく家を建てたのに自分たちが住めないとなってしまう。
③収益的効力
担保権者が目的物を使用・収益し、得た利益を債務の弁済に充てることができる効力。
不動産質権のみに認められる。
※銀行がアパートを管理して家賃を得るなど
ただ銀行側がその管理は大変なので扱いづらい。
※留置権においては物上代位性と優先弁済的効力がない、というのがポイント(土地家屋調査士試験ではそれほど重要ではない)
質権
担保の目的物の占有を債権者に移転し、弁済があるまで債権者がこの目的物を留置して間接的に弁済を強制するとともに弁済がない場合には目的物を競売し、その売却代金から他の債権者に先立って優先弁済を受けることのできる権利。
要するに質屋。
民法上、質権には
・動産質(ブランドバッグなど)
・不動産質
・権利質
がある。
質権の成立
譲渡することができない物は質権の目的物とはなりえない。(禁制品や法律上譲渡が禁止されているもの)
一方、差し押さえが禁じられている物(債務者の生活に欠くことのできない衣服や寝具)は処分が禁止されているわけではないので質権を設定できる。
被担保債権の範囲
質権は元本、利息、違約金、質権実行の費用、質物保存の費用及び債務の不履行または質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。
※担保の範囲が広い
質権設定者による代理占有の禁止
質権の設定は、債権者に目的物を引き渡すことによって効力を生ずる。
※預けなかったら質権は発生しない
ただし、「引き渡すこと」に占有改定は含まれない。
※占有者が物を手元に置いたまま占有者を変更する行為。(この場合預けていないからダメ)
転質権
質権をさらに他人に質入れすること
AさんがBさんの貸金債権の担保のために質入れさせていたBさんの所有物を、AさんのCさんに対する債務の担保としてCさんに質入れする場合。
質権設定者(債務者)の承諾を得て行う承諾転質が許されるのは当然だが、設定者の承諾を得ずに行う責任転質も認められる。
Bさんに許可をもらった転質は当然OKだけど、許可を得ていないのも認められるということ。
ただし、責任転質の場合はそれによって生じた損失について、不可抗力によるものであってもその責任を負う。
Bさんの物に損失が生じたらAさんは責任を負う必要があるということ。
留置権および先取特権の規定の準用
①不可分性
②果実収取・弁済充当権
③善管注意義務
④債務者の承諾による使用収益
⑤必要費の償還請求権、有益費の償還請求権
⑥被担保債権の消滅時効の進行
⑦物上代位性
不動産質権には②、④、⑤の規定の適用が無く、独自の使用収益権(果実収取権を含む)が認められている。
その反面、費用償還請求権が認められていない。
動産質
「質物の占有の継続」が第三者に対する対抗要件。
※占有を失っても質権が消滅するわけではない。
質物の占有を奪われた時、占有回収の訴えによってのみ返還を請求することができる。ただし、第三者に対して質権に基づく返還請求をすることはできない。
※奪われてしまうと占有している状態ではないため
質権設定者(質に入れたほう)に対しては質権に基づく返還請求をすることができる。
不動産質
質権者は不動産質権の目的物である不動産を使用・収益(果実収取含む)することができる。
※使用・収益はお金を貸した方(質権者)ができるのが特徴。抵当権はお金を借りた方が使えるのが違い。
一方、その反面、質権者が管理費用などを負担せねばならず、債権の利息を請求することもできない。
また、不動産質権の存続期間は最長10年。
ということで使いづらい。
不動産質は第三者に対抗するためには登記が必要。
権利質
財産権を目的とする債権。
保険金請求権や銀行預金債権など。
※抵当権の物上代位性を担保にするために保険金請求権を設定する。
抵当権を設定した家が火事で燃えた場合、火災保険が下りる→債務者へ→債権者への流れだが、債務者がお金を浪費しないために権利質にいれておく。(銀行側に直接お金が下りるのでとりっぱぐれない)
通常、権利質に証書は必要ないが、債権の譲渡に証書の交付を要する債権(手形、小切手など)はその証書を交付しなければ質権の設定は効力を生じない。
権利質の質権者は、質権の目的となっている債権を直接取り立てることができる。(銀行が直接保険会社に保険金を請求できるなど)