本日は用益物権に関して。
用益物権
他人の土地を一定の範囲で使用収益できる物権のこと。
①地上権
他人の土地で工作物または竹木を所有するためにその土地を使用する権利(借地権とも)
※登記可
②永小作権
他人の土地で耕作、牧畜をすることができる権利
③地役権
他人の土地で自己の土地の便益に供する権利
通行地役権(他人の土地を通ったほうが駅から近いなど)
日照地役権(他人の土地を使わせないことによって陽の光を自分の土地に入れるなど)
※登記可
④入会権
一定の地域の住民が一定の山林原野を共同管理し、共同に収益する権利。(猟、伐木、きのこ狩りなど)
登記の権利部(司法書士が担当)の中に
甲区 所有権(誰のもの)
乙区 用益物権or担保物(何のために)
などが付く。
地上権
「Aさんの土地にBさんの建物を建てていいよ」と地上権を設定するなど。
地上権設定契約の他に取得時効の完成によって取得することもできる。
土地の継続的な使用、さらにその使用が地上権行使の意思に基づくものであることを要する。
一筆の土地の一部を目的として設定することができるが、登記をするためには当該部分を分筆する必要がある。
Aさんが協力しない場合、Bさんは代位して登記することができる。(自分の持っている地上権を保全できないから)
内容・特徴
①土地利用の対価
地上権は設定者が地代を取らないことも可能。
②権利の存続期間
地上権には存続期間の制限がないので、永代地上権の設定も可能。
地代を払うべき地上権者であっても、存続期間の定めが無い時は、1年前の予告または1年間の地代支払いにより地上権を放棄することができる。
存続期間を定めなかった場合、地上権者はいつでもその権利を放棄することができる。
※建物所有目的であれば借地借家法の適用があり、下限が30年。
→それを下回ると建物が悪くないのに撤去しなくてはいけないため
③譲渡
地上権は自由に譲渡することができる。地上権を他に賃借しない旨の特約は、当事者間で債権的効力を有するにすぎない。
※これ自体を登記することはできないので対抗力はない。ということ。
④修繕請求
設定者は地上権の負担を負うのみ。土地に瑕疵があっても修繕請求をすることができない。
AさんがBさんに土地を貸した場合、土地に問題があってもそれを直す義務はないのでBさんからAさんに修繕請求はできない。
貸す方はラクだよね。
⑤対抗要件
登記が対抗要件になる。
地上権の登記をしなくても、その土地の上に登記されている建物を所有する時はその地上権を第三者に対抗することができる。
※賃借人保護の観点から(借地借家法)
前にもやったね。
⑥消滅原因
地上権は消滅時効によって消滅する。
地代を定期的に支払う約定がある場合、地上権者が引き続いて2年以上地代の支払いを怠った時は、土地所有者は地上権の消滅を請求することができる。
当然ながら土地を借りてるわけだからお金を払わないなら出ていってくれよと。
永小作権
借りた土地で耕作や牧畜ができる権利。
小作料という地代を収める必要がある。(要素)
・権利の存続期間
20~50年。
約定が無く、慣習もない場合には30年。
・解約・その他の終了原因
地主からの消滅請求、あるいは小作人からの権利放棄。
区分地上権
地上または地下の空間の上下の範囲を定めて、工作物を所有するために設定される地上権。
つまり土地の上空や地下を使用する権利のこと。(高圧線、地下鉄など)
※地上権と異なり工作物に限定されている。(竹木はダメ)
BさんがAさんの土地に地上権を設定した場合、Aさんは自分の土地を使えなくなる。
しかし、区分地上権を設定した場合はAさんは自分の土地を使うことができる。
※土地の上下なので土地自体を使うのは関係ない
なので地上権の上に区分地上権を設定するのは問題ない。
設定方法
すでにその土地に使用収益をなす権利を有する者、およびこれを目的とする権利を有する者(地上権者・賃借人など)がいる場合には、その全員の承諾を必要とする。
要はその土地に関係する人達全員の承諾が必要ということ。
効力
登記によって第三者に効力を対抗することができる。
また、登記の際に制限を加えることができる。
※地下鉄ならその上に重い建物を建てない、高圧電線なら高い建物を建てないなど。
地役権
他人の土地(承役地)を自己の土地(要益地)の便益に供する権利。
通行や引水、日照など。
※囲繞地通行権とは別
あくまでも土地の便益ということに注意。
→昆虫採集のための地役権は設定できない(人自体にメリットがあるため)
例えば通行も「通行できることによってAさんにとって便利」ではなく、その土地の価値が上がるということ。
付従性・随伴性
地役権は要役地のために存在する権利なので、要役地と分離して譲渡したり他の権利の目的とすることができない。
また、要役地の所有権が移転すると地役権も移転する。
AさんがBさんに土地を売ったらAさんは通れなくなり、Bさんは通れるようになる。(土地のための権利だから)
不可分性
土地の共有地でも別個・独立のものとして捉えることができない。
なので自己の持分だけ地役権を消滅させることができないということ。
・土地の分割or一部譲渡により数人の物に属する時は地役権は勝手に付いてくる。
・共有者1人の時効の更新・完成猶予の事由が生じた時、共有者全体のために効力を生ずる。
→消滅する時は一緒。全員の時計が一緒。
・共有者の1人が時効によって地役権を取得すると他の共有者もそれを取得する。
・共有者に対する取得時効の更新・完成猶予は共有者全員について生じなければ効力を生じない。
要するに地役権は「取得しやすく、消滅しにくい」ということ。
地役権は「取得しやすく、消滅しにくい」
取得原因
地役権設定契約のほか、取得時効の完成によって取得することができる。
所有権の他、地上権者、永小作権者、賃借人なども設定当事者になることができる。
地役権を時効取得するには土地の利用が継続的になされ、外形上認識できるものでなければいけない。
通行地役権
他人の土地を通行するための地役権。地役権の中で最も典型的なもの。
地役権は一筆の土地の一部に設定できるという特徴がある。
※一筆の土地の一部に設定できるため、地役権図面という特別な図面がある。
(一筆の土地の全てに地役権が設定されている場合はいらない)
なので一物一権主義の例外となる。
ただし、要役地は一筆の土地でなければいけない。
地役権同様、土地の利用が継続的になされ、外形上認識できるものでなければいけない。
承役地に通路が開設されていることが必要。(外形上認識できないから)
かつ、その通路開設が要役地所有者によって自らなされたものであることが必要。
※自分で通路開設しなければいけない(ちょっと気まずい気もするけど、、)
これらがないと時効取得できない。
通行地役権と登記
通行地役権も物権なので、第三者に対抗するには登記が必要。
承役地が譲渡された場合、
①承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることが客観的に明らかであること
②譲受人がそのことを認識していたか、または認識することが可能であったこと
これらが分かっていたなら譲受人に対して登記が無くても地役権を主張することができる。
要するに「分かっているなら今まで通り使っていいよね」ということ。