土地家屋調査士

【土地家屋調査士・民法】無権代理

今回は無権代理について。

【土地家屋調査士・民法】代理今回は代理について。 簡単に言うと自分の代わりに代理人に交渉に当たってもらうこと。 https://tochikaokuch...

無権代理

無権代理とは?

代理人でもないのに勝手に行為に及ぶこと。(勝手に代理人を名乗った)

本人(Aさん)からしたら勝手なことしてふざけんなだし、相手方のCさんからしても信頼してしまうので保護の規定がある。

代理権がないので当然ながら本人に効果帰属しない。

追認権

Aさん(本人)はBさん(無権代理)が行った行為に対して追認することができる。

思ったより行為の内容が素敵だった場合など。(自分の土地を勝手に売られたけど実は100億円で売れた。とか)

AさんもCさんも損をしないからね。

ただし、追認は原則としてAさんからCさんに対してしなければいけない。

Bさんに言っても意味がない。Aさんが追認すればCさんは取り消しや無権代理人の責任を追求することができなくなる。

一方、当然ながら追認拒絶もできる。

催告権

相手方は、期間を定めてその期間内に追認するかどうかを答えてくれと本人に催告することができる。

Cさん「Bさんは無権代理だったみたいだね。これ追認する?それとも拒絶する?」

とAさんに聞くことができる。

これを認めないといつまでもCさんが不安定な状態になってしまうため。

期間内に返答(確答という)がなかった場合、追認拒絶したものとみなされる。(取消擬制)

もともと無権代理行為は本人に効果が帰属しないため。

注意として、制限行為能力者の相手方の催告とは逆になる。

制限行為能力者の場合、法定代理人、保佐人、補助人に対して催告した場合、期間内に返答がない場合は「追認」したものとみなされる。

制限行為能力者を保護する度合いが強いため。

一方、無権代理行為に関しては追認拒絶となる。

催告

制限行為能力者:追認擬制

無権代理行為:追認拒絶

取消権

無権代理人の行った契約は、「本人が追認しない間」は相手方が取り消すことができる。

要するに先にした方が認められるということ。

ただし、契約の時に無権代理であることを相手が知っていた場合は取消権は認められない。

知っていたならダメよということ。

一方、催告権に関しては知らなかったor知っていた(善意・悪意)は問われない。

無権代理を相手側が知っていようがいまいが催告することができる。

催告権:どんな場合でもできる

取消権:相手側が善意(知らなかった)の場合のみ

無権代理人の責任

①代理人であることを証明できなかった

②本人の追認がない

③相手方が無権代理であることについて善意無過失(知らないし知ることもできなかった)

④無権代理人が行為能力者である

⑤相手方が取消権を行使していない

この場合は、無権代理人は相手方の選択に従って契約を履行するor損害賠償責任を負う。

重い責任があるので「無権代理はやめてね」と暗に言っているということ。

④無権代理人が行為能力者である

つまり事理弁識能力を要求している。なので無権代理人が未成年者や成年被後見人の場合はそちらを優先する。(判断能力はないでしょということ)

以上をまとめると、

催告権:悪意でも善意でも(知ってても知らなくても)OK

取消権:善意(知らなかったら)ならOK

責任追及:善意無過失(知らないし知ることもできなかった)ならOK

ということ!

無権代理と相続

被相続人

亡くなった方

被相続人が持っていた権利などは全て相続人が承継する。

その際、本人が追認・拒絶できる権利も継承される。

ということはつまり無権代理での損害賠償なども継承される。

例えば親が本人(子供)の土地を勝手に売ったとする。

仮に親が死んだ場合、無権代理人(親)がした責任を本人が負わなくてはいけないのだろうか?

無権代理人が本人を単独相続した場合

親(本人)の土地を子(無権代理人)が無断で売却し、その後、親が死亡した場合。

親(本人)は契約に対して追認・拒絶をする権利があるが、その前に亡くなってしまった。

子(無権代理人)が追認・拒絶をできるようになると子(無権代理人)にとって都合が良くなるため、Cさんの保護の観点から追認・拒絶はできない。(有効ということ)

なので子(無権代理人)は土地をCさんに引き渡すことに。

ただし、親(本人)が追認・拒絶をしていない場合の話なので本人が生前に追認・拒絶をしていれば子(無権代理人)が本人を相続した場合にも同様の結論になるか?

→この場合は追認・拒絶が有効になる。土地をCさんに渡すことはない。

無権代理人が本人を共同相続した場合

親(本人)の土地を子(無権代理人)以外に相続できるもの。

親(本人)が追認・拒絶できる権利は相続者全員に不可分(分けられない)で全員に承継される。

なので継承した全員が追認・拒絶と言わなければその効果は出ない。

つまり子(無権代理人)が相続人の一人だったからといって当然有効になるものではない。

なので一人でも反対したら土地は売れなくなるということ。

本人が無権代理人を単独相続した場合

親の土地を子(無権代理人)が無断で売却し、その後で子(無権代理人)が死亡した場合。

親が子の無権代理人の責任を相続する。

この場合、親(本人)は無権代理人の地位を相続しても本人の意思で追認・拒絶できる。

子供に勝手に土地を売られたわけだからね。

だけど同時に無権代理人の責任も負うことになる。

つまり、相手(売ってもらった側)が善意無過失(何も知らない、知ることもできなかった)場合、無権代理人の責任追及ができる。

親は何もしてないのに、、。

無権代理人を相続した者が本人を相続した場合

Aさん(夫・無権代理人)がBさん(妻・本人)の土地を勝手に売却した後に死亡した。

その後AさんとBさんの子であるCさんがAさんの地位をBさん(本人)と共同相続した。

さらにその後Bさん(本人)が死亡したのでCさんがこれを相続した場合、本人の地位に基づいてCさんは追認・拒絶することができるのか?

これは、一度無権代理人になった後で本人を相続しているので、最初の「無権代理人が本人を単独相続」した場合と一緒。

なので追認・拒絶することができない。

実際子供は悪いことはしてないのに、、。

まとめるとこのようになる。

(H22-1)

表見代理

無権代理の一種。

例①

AさんはCさんに対して「土地を売りたいのでBさんに代理権を与えました、Bさんに代理人として交渉に当たってもらいます」と説明(表示)した。

しかし、実際はBさんに代理権を与えていなかった。

にもかかわらずBさんはAさんの代理人としてCさんに対して土地を売却してしまった。

※代理権授与の表示による表見代理

例②

AさんはBさんに対して、自分の所有してる土地を賃貸する代理権を与えていた。

しかし、BさんはAさんの代理人としてCさんに土地を貸すのではなく売ってしまった。

※権限外の行為の表見代理

例③

AさんはBさんに対して土地を売却する代理権を与えていた。

しかし、期限が到来したためその代理権は消滅した。

にもかかわらずBさんはAさんの代理人としてCさんに対して土地を売却してしまった。

※代理権消滅後の表見代理

これらはいずれも無権代理になる。

無権代理ではあるものの、相手がそのように信じてるのも無理はなく、本人にもその事情について何らかの関与がある時は、本人にも帰責性があるものとされる。(本人も悪いよねと)

そのため、本人に有効な代理権があったのと同様の責任を負わせることになる。

これが表見代理の制度。

ちょっと本人が可哀想な気がしなくもない、、。

代理権授与の表示による表見代理

前述の例①。

相手方が善意・無過失(知らない、知ることもできない)の場合、AさんはCさんに土地を売らなくてはいけない。

①代理権授与表示がある

②表示された代理権の範囲内の行為である

③相手方の善意・無過失

を満たす必要がある。

権限外の行為の表見代理

前述の例②。

これも相手方が善意・無過失の場合、相手に売らなくてはいけない。

元々基本代理権があるのがポイント。

①基本代理権の存在

②基本代理権を越えた代理行為がある

③相手方が善意・無過失

を満たす必要がある。

代理権消滅後の表見代理

前述の例③。

相手方が善意・無過失の場合、AさんはCさんに土地を売らなくてはいけない。

①かつてあった代理権が代理行為当時には消滅していたこと

②かつての代理権の範囲内の行為である

③相手方の善意・無過失

を満たす必要がある。

また、以上の3つは組み合わせて表見代理にすることもできる。

例えば「かつてあった代理権を『越える』行為」をしたことは例②でも「越える」行為をしているという意味では一緒。

なのでこの場合も表見代理は成立する。

無権代理の場合は相手方が責任追及、または追認・拒絶の権利があった。

表見代理が成立する場合でも本人に表見代理を主張しないで無権代理人に責任追求することができる。(選択できる)

要はAさん(本人)に対して土地を売りなさいと言える(効果帰属)、または無権代理人の責任追及(土地はいらないから無権代理人Bに対して損害賠償する)できるということ。

あるいは本人の追認を受ける前に契約の取消も行うことができる。

相手方としては

①効果帰属(本人に)

②責任追及(無権代理人に)

③契約取消し

の3つの選択肢があるということ。

相手方保護の規定なので無理に契約を成立させる必要もないというわけ。

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