今回は所有権に関して。
Contents
所有権
ある特定の物を全面的に支配する権利。
自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利を有する。
相隣関係
※土地家屋調査士の民法の特徴
隣地の使用請求
一定の範囲で隣地の使用請求をすることができる。
ただし、住家に立ち入るには隣人の承諾が必要。また、損害が発生した場合には賠償しなければならない。
袋地所有者の囲繞地通行権
人の土地を通らないと道路に出られない場合。
他人の土地に囲まれて公道に出られない土地
袋地を囲んでいる他の土地
「他人の土地に入れない」としてしまうと、全ての袋地に道路をつけなければいけなくなり、非効率。
というわけで、袋地の所有者は道路にたどり着くために他人の土地を通行できるとされている。(囲繞地通行権)
※登記や契約などはいらず、所有権さえあればOK
※その土地の地上権者、対抗力ある賃借権者にも認められている
※通行地役権は双方で話し合われて決めるもの
道路に面しているにも関わらず「駅に近いから」といった理由で他人の土地に入るのは地役権になる。
(H22-3)
通行の方法・場所
必要な限度で、かつ囲繞地にとって損害の最も少ない場所や方法でなければならない。
必要があれば通行権者は通路を開設することもできる。
償金支払い義務
通行権者は通行地の損害に対して償金を支払う必要がある。
損害の賠償として支払う金
ただし、分割・譲渡による場合は償金の支払いをする必要はない。
※当事者が通行料に関する問題も織り込んで価格設定しているため
土地の分割・譲渡によって袋地が生じた場合の処理
①AさんとBさんが共有する一筆の土地(甲土地、乙土地)を分割した場合
→Aさんは乙土地のみ通ることができる。
(周りの土地は通るなよということ)
自分で作った土地を通ろうよということ。
※無償
②Bさんが一筆の土地(甲土地、乙土地)を分筆して、甲土地をAさんに譲渡した場合
→Aさんは乙土地だけ通ることができる。
(周りの土地は通るなよということ。上に同じ)
③Bさんが一筆の土地を甲土地、乙土地に分筆した上、甲土地をAに、乙土地をCさんに譲渡した場合
→AさんはCさんが取得した乙土地のみを通ることができる。
※AさんはCさんに償金を支払う必要はない。無償の土地は無償のまま。
④上記②の後、BさんがCさんに乙土地を譲渡した場合
→AさんのCさんが取得した乙土地に対する通行券は消滅しない。
(他の土地は通れない。同じだね)
⑤甲、乙両土地の所有者であるBさんが、甲土地をAさんに譲渡した場合
→Aさんは乙土地のみを通ることができる
⑥上記⑤の後、Aさんが丙土地を譲り受けた時
→もはや甲土地は袋地とはいえないため、Aさんは乙土地について通行権を主張できない。
⑦同一の所有者に属する数筆の土地の一部が担保権の実行としての競売により袋地となった場合
→囲繞地通行権は認められる。
その他の相隣関係
①雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止
②境界標の設置
分筆の際は土地家屋調査士が境界標を設ける。
境界標は相隣者(隣の土地の人同士)の共有になる。つまり設置費用もお互いで按分する。
※実際は測量に入る土地の人が全部持つのが普通
③竹木の枝の切除及び根の切取り
枝がこちらの土地を越えてきた場合、所有者に切除させることができる。
根がこちらの土地を越えてきた場合、自分で切除することができる。
④境界線付近の建築の制限
建物は境界線から50cm以上離す必要がある。これに反して建築しようとする者に対し、中止・変更させることができる。
※建築基準法では50cmのところに作っても可
建築着手時から1年経過後、または建物完成後は損害賠償請求のみすることができる。
建物ができてからはダメだよということ。撤去できないから。(占有保持の訴えと同じ)
⑤自然水流に関する規定
隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはならない。(せき止めちゃダメ)
天災などで低地において閉塞した時には高地の所有者は自己の費用で水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。(他人の土地でも)
下の土地が雨で浸水してしまった、このままでは自分のところまで水が迫ってきてしまう、、。といった状況。
所有権の取得
①承継取得
前の持ち主が持っていた権利がそのままの状態で取得すること。
・特定承継 個々の権利を移転させた承継
・包括承継 相続などによって権利義務を一括して承継するもの
②原始取得
権利がまっさらな状態で取得すること。
例として時効取得、即時取得がある。
また、所有権に特有の取得方法として無主物先占、遺失物取得、埋蔵物発見、添付がある。
無主物の帰属など
・無主物の帰属
所有者のない動産(海で釣った魚など)はその所有権を取得できる。
対して、所有者のない不動産は国庫(日本国のもの)に帰属する。
また、相続人無くして所有者が亡くなった場合、これも国庫に帰属する。
しかし、共有者がいた場合は共有者のものになる。
※持ち分が2分の1だった場合はその分はBさんが取得する
・遺失物取得
落とし物、忘れ物は必要な手続きを行い3ヶ月以内に所有者が現れなければその物の所有権を取得できる
・埋蔵物発見
自己所有の土地から大判小判を発見したような場合、占有を取得した者は必要な手続きを行い6ヶ月所有者が現れなければ所有権を取得できる。
添付
所有者の異なる2つ以上の物が結合・混同した結果、元に戻すことが著しく困難である場合、それを全体の1つの物として扱い、当事者にその分離・復旧の請求権を認めないこと。
添付の分類
・不動産の付合
Aさんの土地にBさんが無権限で木を植えた場合
木はAさんのものになるので、木を植えた人に対して「抜いて」という請求もすることはできない。
※付合が起きた時点で土地の所有者の物になってるから。
ただし、強い付合の場合(不動産の構成部分となり、社会経済上の独立性を失った場合)には、所有権を留保することができない。
・動産の付合
結合した動産について主従の区別ができる場合は、主たる動産の所有者の物になる。
一方、主従の区別ができない場合(船にエンジンを溶接したなど)は元の動産の価格の割合で合成物を共有する。
船とエンジンでどっちが中心かわからないため。
・混和
動産の付合と同じ処理をする。
AのワインとBのワインが混ざってしまった場合は分けることができないので混ざった物の割合で分ける。ということ。
・加工
他人の動産に加工して別種の物を製作した場合(糸から服を作った、紙から本を作ったなど)、加工物は材料の所有者に帰属する。
ただし、加工による増価が著しく材料の価格を超える場合、その増価分と加工者の提供した材料の一部の和が他人の材料の価格を超える場合、加工者が加工物の所有権を取得する。
つまり、Aさんが持っていた100円の糸を使ってBさんが1万円の服を作った場合、Bさんが所有権を取得するということ。
※加工は動産の規定ということに注意
建物に増改築を行った場合
増改築部分が当該建物と別個独立の存在を有せず、その構成部分となっている場合、増築部分は当該建物の所有者に帰属する。
Aさんが所有する建物をBさんに貸していた。Bさんが勝手に2階部分を作った場合、増築部分もAさんのものになる。
ただし、増築した部分が独立性を有し、区分所有権の対象となれば、特約の無い限りその増築部分はBさんのものになる。
※マンションのようにそれぞれ別個に入り口がある場合
区分建物の場合、一個一個表題登記をする必要があるが、一棟に属する区分建物で一括して表題登記しなければいけない。
なので、もともと登記されていた非区分建物に接続して建物を新築して全体として一棟の区分建物ができた場合、非区分建物から区分建物への変更登記と、増築部分の区分建物の表題登記を一括申請しなければならない。(不動産登記法との関連)
建物と建物が一体化した場合
Aさん所有の建物とBさん所有の建物の間の壁を壊し一つの建物にした(合体)場合、「動産の付合」の規定を類推適用して、価格の割合に応じて合体した建物をAさんとBさんの共有にする。
同じ価値だった場合、2分の1ずつ所有権がつく。(抵当権がある場合はそれも残る)
他人が材料を提供して、建前(たてまえ)を独立の不動産である建物に仕上げた場合
完成する前の建物
この場合、加工の規定を適用する。
請負人Aさんが自分で材料を用意して家を途中まで建てていたが途中でいなくなってしまった。その後、注文者Bさんの依頼を受けた請負人Cさんが自分の材料を提供して建物を仕上げた。
この場合、完成した建物は誰の物になるのか?
→Cさんの物になる。(加工の規定を適用)
付合、混和または加工に伴う償金の請求
付合、混和または加工の規定の適用によって損失を受けた者は、不当利得の規定に従ってその償金を請求することができる。