土地家屋調査士

【土地家屋調査士・民法】意思表示

今回は主に意思表示のお話です。

法律行為

その前に、そもそも法律行為ってなんだっけ?

ってことなんですが、

要は「買いますよ」「売りますよ」という意思表示によって契約(法律行為)が発生するということ。

法律行為の種類としては

・契約:双方合意でおこなうもの(売買契約、賃貸借契約など)

・単独行為:単独の意思表示(遺言など)

・合同行為:意思表示が同一目的に向けられている(社団法人設立行為など)

がある。

ちなみに公序良俗違反というものがあって、

公序良俗違反

公の秩序や全量の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効

要は空気読めということだね。

では法律行為に必要な「意思表示」に関して説明していきます。

意思表示

商品を「買います」「売ります」という表示のこと。

意思表示の構造

動機(お腹が減った)

①効果意思(買おうと思う)

②表示意思(買いますと言おう)

③表示行為(買いますと言う)

この①~③のことを意思表示という。動機の次のこと。

外部への表示③が真意①と異なる場合(買いたくないけど「買います」と言う)

→本人が意図したところを尊重するべきだ!

VS

→外部への表示を尊重すべきだ!

どちらが法の解釈的に正しいんだろう?

受領能力

その前に、意思表示を受ける能力について解説。

「買います」「売ります」という意思表示を受けた側が

①意思無能力者

②成年被後見人

③未成年者

だった場合、意思表示した側は

「自分『買います(売ります)』って言ったんですけど?」

と主張することができない。(相手に意思表示を受け取る力がないから)

ただし、

①相手の法定代理人がその意思表示を知った後

②意思能力を回復

③行為能力者になった

この場合は意思表示をしたものは相手に対して主張することができる。

相手側に意思表示を理解する能力があるということなので。

意思表示を理解する能力が相手側にあるかどうかが大事。

意思の不存在

効果意思がないこと。(買うつもりはないのに買うと言ってしまった)

これを「意思の不存在」という。

瑕疵ある意思表示(無いわけではないが何かしら不完全)

瑕疵

①キズ、欠点②法律や当事者の予期するような状態や性質が欠けていること

意思の不存在の種類

・心裡留保:ウソのこと。(本当は買うつもりがないのに買うと言おう)

・通謀虚偽表示:二人で通謀する虚偽の表示(本人も相手も売買するつもりがないのにお互い相談して売買契約を成立させる)

・錯誤:勘違いのこと。(緑茶だと思ったら紅茶だった)

それではこの3つをより詳しく解説。

心裡留保

買う気が無いのに買いますという。要はウソ。

ウソをついた方、つかれた方のどっちを保護すべきか?

原則としてウソをつかれた方を守る。(意思表示は有効)

が、

相手がウソをついた側の真意(ホントの気持ち)ではないことについて悪意または有過失(知っている、知ることができた)場合は無効。

ウソを付いた側の本音を知ってた、知ることができた場合は無効。

ホントの気持ちではないこと:内心的効果意思の欠缺(けんけつ)

欠缺

欠けていること

また、心裡留保による意思表示を信頼した善意の第三者(何も知らない第三者)に対しては意思表示は無効にできない。

Aさん:(お金無いけど)「100万円Bさんにあげるね」

Bさん:(Aさんがお金ないの知ってるけど)「ありがとう。もらうね」(無効にできる)

Cさん:「あ、BさんはAさんから100万円もらうのか。じゃあBさんに売る商品を仕入れよう」(有効)

この場合、Cさんは保護される。(Aさんがお金ないのを知らなかった(善意)から)

通謀虚偽表示

二人でぐるになって虚偽の表示をしたもの。虚偽表示ともいう。

相手方の保護を考える必要がない。(二人とも悪いからね)

ので、原則として意思表示は無効になる。

だけど、善意(知らなかった)第三者に対しては意思表示の無効を主張できない。

※第三者から無効を主張することはできる。

第三者の保護

当事者および包括承継人以外の者。

包括承継人

相続人のこと

Aさんは土地を持っていたが差し押さえを食らって競売になった。

Aさん「この土地をBさんに売ったことにしてBさんの名義にしよう、そうすれば土地を差し押さえられることもない。頃合いが良くなったら買い戻せばいいだろう」

とBさんとグルになる。

その後、Bさんは何も知らない(善意)Cさんからその土地を売って欲しいと言われ、売ってしまった。

Aさん→Bさんへの譲渡は通謀虚偽表示による譲渡なので「仮装譲渡」と言われる。

この場合、Cさんは第三者となり、不動産の仮装譲受人(Bさん)からの「譲受人」にあたる。

なのでCさんはこの土地を手に入れることができる。

ちなみに、仮装譲受人(Bさん)から「取立て」のために債権を譲り受けた者

また、仮装譲受人(Bさん)の一般債権者

は第三者には該当せず、認められない。

一般債権者

借金などの理由で相手に金品等を請求できる権利(債権)を持っている人のうち、「担保」がない立場の人。この場合はBさんにお金を貸してる人(抵当権を付けてるわけではない)

一般債権者は大体は保護されない。(だから抵当権を付けろという話になる)

ただし、差押債権者、または抵当権の設定を受けた者であれば第三者として保護される。

1番抵当権が仮装(通謀虚偽により)で放棄された場合、1番抵当権者になったと勘違いした2番抵当権者も保護されない。(抵当権には順番がある)

ちなみに土地の仮装譲受人(Bさん)がその土地に建物(アパートとか)を建てて貸した場合の賃借人(借りた人)も第三者としては該当しない。

まあアパート借りてるだけだからね。土地の話をしてるのに建物は関係ないよねと。

逆に建物が仮装譲渡された場合は土地は関係ないよねとなる。

要は仮装譲渡されたものが土地の場合、建物に絡んだ人は関係ない。

仮装譲渡されたものが建物の場合、土地に絡んだ人は関係ないよねということ。

転得者

転得者とは?

→譲り受けた人からさらに譲り受けた人。

先の例の場合

AさんがBさんに土地を売った(通謀虚偽で)

Bさんは何も知らない(善意)Cさんにその土地を売った。

さらにCさんはその土地をDさん(転得者)に売った。

ということ。

CさんもDさんも善意(何も知らない)なら問題はないが、

Cさんが悪意(知っていた)で何も知らない(善意)Dさんに売った場合、

Dさんは保護される。(土地を手に入れることができる)

まあDさんは何も知らなかったわけだから当然といえば当然。

では逆に、

AさんがBさんに土地を売った(通謀虚偽で)

Bさんは何も知らない(善意)Cさんにその土地を売った。

何も知らない(善意)Cさんが悪意(知っていた)のDさんに土地を売った場合

この場合はDさんは悪意(知っていた)としても保護される。

なのでAさんはDさんに土地を返せと主張することができない。

なぜかというと、間に挟まっていた善意(何も知らない)のCさんを保護するため。

Cさんの段階では返せと言えないのにDさんには言えるのはおかしいよね?と。

Cさんは土地を売れなくなって困ってしまうし、、。

転得者が悪意(知っていた)であろうとCさんが善意(知らなかった)なら認められるということ。これを「絶対的構成」という。

当事者が善意(知らなかった)であればOK。無過失(落ち度が無い)であるということは必要ない。

ちなみに善意だけよりも善意無過失のほうが条件が厳しい。ここではそこまでは要求しないよということ。

そしてこの善意の第三者が権利を虚偽表示の当事者(Bさん)に対抗するために登記をする必要はない。

まだ登記を移してなくても大丈夫ということ(Bさんはまだ名義移してないから返せと言ってくることも)

通謀虚偽表示ではないけど善意の第三者を保護するパターン(類推適用)

AさんがBさんに土地を売った。(通謀虚偽で)

この時、登記により名義がBさんに移っているが、本来は通謀虚偽なのでおかしい。

これを「虚偽の外観の存在」という。

AさんとBさんがグルになってやってるので責任はAにあるよね?(外観作出への帰責性

その取引を何も知らず(善意)信頼した(虚偽の外観への信頼)Cさんがいれば、

虚偽の外観を生み出した人は責任を負うことになる。

以上が通謀虚偽を細かく分解したもの。

仮に通謀虚偽ではなかったとしても上記に当たる場合は、同様の保護をしようとなる。

例①

BさんがAさんの土地を勝手にBさん名義にして、さらに何も知らない(善意)Cさんに譲渡してしまった。(AさんとBさんでグルではない)

Aさんは当然返してほしいのでCさんに対して登記を抹消してもらうよう求めた。

ここで問題になるのは「帰責性」(誰に原因があるのか)

Aさんは勝手にBさんに名義変更されているので帰責性はない。

しかし、Bさんが勝手に名義変更したことを知りながら数年放置していた場合、これに対しては責任があるとみなされる。(帰責性が認められる

なのでこの場合はAさんはCさんに所有権を主張することはできない。

単に放置してたのではなく長期間放置してたことにより帰責性が認められた。

例②

Aさんが土地をBさんに売った。

Bさんの不注意もあって、Bさんがその土地に担保権を設定したかのような(虚偽の外観)登記を行った。

その後、その担保権含め信頼したCさんがAさんから所有権を譲り受けた。

Bさんは不注意ではあったけど、自分から虚偽の登記を求めたわけでもないので帰責性が弱い。

Bさんもそこまでは悪くないよね。ということで、

Cさんが善意かつ「無過失」だったらBさんは対抗できないとした。(加重した)

無過失

知らなかったし、知ることもできなかった。

例③

土地の所有者トチタローさんから所有権移転登記手続きを任せられていたAさんが、自分に所有権を移転した。(本来は任されていただけのはず)

さらにAさんからBさんに所有権移転登記された。

Aさんが悪いが、トチタローさんがAさんに言われるがまま(重要書類を渡すなど)になっていた場合、あえて放置した場合と同じくらい帰責性があるよねと。

なのでトチタローさんからAさんへの所有権の移転はなかったとは主張できない。

要は、なんとかできる可能性があったのに長時間放置していた場合は通謀虚偽並の帰責性があるので善意の第三者には対抗できないよということ

なんとかできる可能性があったのに長時間放置していた場合は通謀虚偽並の帰責性がある

錯誤

いわゆる勘違い。

・100円と言うべきところ、200円と言ってしまった(表示上の錯誤

・1ドルのつもりが1ユーロだった(内容の錯誤

など。

勘違いしたほうが可哀想なので取消できるようにしよう。となる。

また大事な点として「動機の錯誤」がある。

動機の錯誤

①動機   近くに商業施設ができるから土地が値上がりしそうだ

②効果意思 土地を買いたいと思う

③表示行為 土地を買いたいと言う

②と③の間には錯誤(勘違い)は起きていないが、その前提となる動機に錯誤がある(商業施設は実はできない)

→相手としては知ったこっちゃないよね。

この場合は、取消しできない。

厳密に言うと相手方に表示がされていないと取消しできない。

「商業施設ができるらしいですね。だから土地ください」

という言い方をしていれば取消しできる。

ただし、口で言わなくても、「黙示の表示」が認められることもある。

(商業施設がオープンするというチラシを持っていたなど)

簡単に言うと、動機が相手に伝わっていなければ取消しできない。

動機が相手に伝わっていなければ取消しできない

そしてこれは社会的に重要で、また主張者に重大な過失がないことが前提。

重要性 

錯誤がなかったら主張者だけでなく一般人もその意思表示はしなかっただろうと考えられる場合と思われること

表意者に重大な過失がないこと

単なる過失ではなく、重過失。

相手方に主張者の錯誤(勘違い)について悪意(知っていた)または重過失がある場合は相手方を保護する必要はない。

また両者とも錯誤(勘違い)に陥っている場合、両方とも保護される。

そして錯誤(勘違い)の取消しを行うことができるのは表意者(主張する側)に限られる。

相手方や第三者は原則として錯誤取消しを主張することができない。

例えばAさんが勘違いしてBさんから土地を買った場合。

Aさんは勘違いに気づいて取消しをすることはできるが、Bさんが取消しを求めることはできない。

まあBさんはAさんが勘違いしてるかどうかなんてわからないからね、、。

ただし、第三者が表意者に対して債権を保全する必要がある場合、表意者が意思表示の瑕疵(間違い)を認めている時は、表意者が取消を主張する意思がなくても第三者が取消しを主張することができる。

なんか難しい話だけど、

要は第三者と利害関係が発生していて、なおかつ勘違いが第三者にも明らかになっていたら第三者は取消しを主張することができるということ。

善意の第三者

AさんがBさんに◯土地を売るはずだったのが間違えて△土地を売ってしまった。

さらにBさんは△土地をCさんに売った。

AさんはBさんに対して△土地を返してほしいが、この場合はCさんの保護を考えて

Cさん(第三者)が善意(何も知らない)かつ過失がない(無過失)場合、Aさんは主張できない。

瑕疵ある意思表示

他人から不当な干渉(詐欺・脅迫)を受けて自由になされなかった意思表示のこと

詐欺

相手方から騙された場合、騙された側は意思表示を取り消すことができる。

まあ騙されたわけだからね、、。

第三者から詐欺を受けることもある。

AさんとBさんが土地の売買を行うのに、Cの詐欺によって買わされた。など。

要するに、詐欺によって錯誤に陥っている。

動機の錯誤は原則として取消しできないけど(自分の勘違いだから)、この場合は表意者が、詐欺取消しor錯誤取消しを選択的に主張することができる。

(前述のとおり、動機は表示されていないと錯誤取消しはできない

選べるってこと。

第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知ってた、あるいは知ることができた場合に限り、意思表示を取消すことができる。

Aさんが詐欺を受けてることはBさんは知らない。

Bさんが知ってた、知ることができた場合は取り消すことができるということ。

そうでなければ取消しはできない。

第三者の保護

詐欺による意思表示の取消は善意かつ無過失の第三者に対抗することができない。

AさんがBさんに騙されてBさんに土地を売った。

その後、何も知らない(善意)CさんにBさんがその土地を売った場合、AさんはCさんに土地を返してと主張することはできない。

ただ、AさんはCさんに対抗できないだけなので、Bさんに対して取消しを求めることはできる。

そうするとBさんはAさんに土地を渡さなければいけなくなる。

そして当然ながらCさんはAさんとBさんの間の契約取消し「前」に現れていなければダメ。

※詐欺は脅迫と違って表意者に落ち度(下心)が少しあるのがポイント

脅迫

「これを買わないと殺すぞ」など。

他人の脅迫によって畏怖の念を生じた結果、形成された意思表示。

これは当然常に取り消すことができる。

※保護の度合いが一番強い。

なので、取消し前の善意の第三者にも対抗することができる。

AさんがBさんに脅迫されて土地をBさんに売らされた。

Bさんが何も知らない(善意)のCさんにその土地を売った。

この場合、Aさんの方が保護される。脅迫を受けていなければ売っていなかったので。

なのでAさんはCさんに対して土地を返してと対抗することができる。

取消し「前」

AさんがBさんに殺されると思ってた時に現れたCさんということ

また、詐欺の場合と違い、第三者保護の規定がない。

AさんがCさんに脅されてBさんの土地を買った。

この場合Bさんは、AさんがCさんに脅されていることは知らないが、取り消すことができる。(保護の度合いが強い)

意思表示まとめ

以上をまとめるとこの表の通りになる。

※錯誤、詐欺、脅迫(有効:取り消せる 無効:取り消せない)

いや~覚えることが沢山あって大変だ、、。