今回は債権について。
とはいっても土地家屋調査士試験には債権からの出題はあまりない。直接業務に関連してくることが少ないため。
債権
土地家屋調査士試験においては出題は殆どないが、
債権法の分野で最も重要なのが登記請求権をはじめとする債権者代位権。
債権の目的
物権と債権の違い
物権
絶対性がある(誰に対しても主張できる)
物権法定主義(権利が決まってる)
競合しない(先に成立した物権が優先)
債権
相対性(債権者は債務者に対してのみ請求できる)
契約自由の原則(いくらでも作れる)
平等(いつ成立したかは関係ない)
債権の種類
特定物債権
特定物の引渡しを目的とする債権
種類債権
種類物(不特定物)の引渡しを目的とする債権
要は個性のないもの、ビールやパソコンなど(どれも同じ)
金銭債権
一定額の給付を目的とする債権(額面で判断される)
債権の効力
債務不履行
債務者が正当な理由がないにも関わらず債務の本旨に従った履行しないこと。
①履行遅滞
◯月◯日に商品の引渡しを受けるはずなのにもらえなかった
②履行不能
もらうはずの商品がない
③不完全履行
商品は来たが壊れていた
の3つに分類される。
履行遅滞
要件
・履行が可能
・履行期を徒過
・履行遅滞が違法であること
一定期間内にある行為をするように定められている場合に、その行為をしないで期間を経過してしまうこと。
効果
・強制履行(債務者の帰責性は不要)
・契約の解除(債務者の帰責性は不要)
・損害賠償請求(債務者の帰責性が必要)
履行不能
要件
・契約成立後に履行が不能となったこと
・履行不能が違法であること
効果
・契約解除(債務者の帰責性は不要)
・損害賠償請求(債務者の帰責性が必要)
・代償請求
※代償請求
第三者Cさんの不法行為によって商品が消失した場合、売主側はCさんに対する不法行為に基づく損害賠償請求権があるが、これを買主側に移転することができる(買主側がCさんに損害賠償を請求するということ)
不完全履行
要件
・一応履行がなされたが不完全であること
・不完全履行が違法であること
効果
・強制履行(債務者の帰責性は不要)
・契約の解除(債務者の帰責性は不要)
・損害賠償請求(債務者の帰責性が必要)
責任財産の保全
責任財産とは?
強制執行の引当となる財産。つまり債務者が弁済することができない時にあてにされる財産のこと。一般財産ともいう。
債権者代位権
債務者が自分の権利を行使しない場合に、債務者に代わって債権者がそれを行使することができる権利。
AさんがBさんにお金を貸していた(貸金債権)
BさんはCさんにお金を貸していた。さらに時効消滅が迫っていた。
つまりBさんがCさんの時効更新しないといけないが、お金が戻るとAさんにお金を返さなくてはいけないのでイヤだ。
Aさんの貸金債権を守る(保全)ためにAさんがBさんの代わりにCさんに更新してもらい、時効消滅を逃れ、Bさんに返ってきたお金をAさんは回収することができる。
要件
①債権の保全のために必要であること
債務者が無資力状態に陥っていること。要は返すお金がないこと。
ただし、債権者代位権が転用される場合には無資力要件は不要。
土地家屋調査士が債権者代位権を使って登記するのは、この転用された場合。(なので無資力要件が大事)
②債務者がみずからその権利を行使していないこと
債務者がやることやってたら必要ないよねと
③被保全債権が強制執行可能な金銭債権であること
金銭債権であることが原則。
ただし、債権者代位権の転用の場合は金銭債権以外の特定債権であっても認められる時がある。(土地家屋調査士の方)
④被保全債権が原則として弁済期にあること
消滅時効を更新する場合は保存行為にあたるので例外として債権者代位権を行使することができる。(上の場合Bさんに不利益はないから)
債務を履行すべき時期のこと
⑤債務者の権利が一身専属的な権利でなく、差押禁止権利でもないこと
権利を行使するかどうかが権利差の個人的意思に委ねられなければならない権利
(夫婦間の契約取消しや親権など)
債務者の意思に反してまで行使はできない。
ただし、債権者代位権自体は一身専属権にあたらないので、債権者代位権をさらに代位行使することは可能。(代位を代位できる)
行使
債権者代位権は裁判外でも裁判上でも行使することができる。
なので土地家屋調査士が行う代位に裁判所は必要ない。
債権者が自己の名において債務者の権利を行使するのであって、債務者の代理人として行使するのではない。
債権者代位権の転用
債務者の責任財産保全を目的とする債権者代位権を登記請求権や賃借権のような特定債権保全のために転用することができる。
債権者から見て債務者が有する強制執行の直接対象となる目的物である財産や権利のこと
Aさんが所有する土地の一部をBさんが買い受けたにも関わらず、Aさんが分筆登記をしない場合、Bさんは買い受けた部分の所有権を移転するためにAさんに代位して分筆登記を申請することができる。(被代位者Aさん、代位者Bさんということの委任状がBさんからあれば)
Bさんが土地の全部を買い受けた場合、分筆しないと保全されない債権がないため、代位した分筆登記を申請することはできない。
一部の所有権移転ができないから代位をして分筆登記が申請できるということ。