それでは民法の最後のトピック、相続法。
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相続法
読んで字のごとく、相続に関する法律。
土地と相続は関連があるの土地家屋調査士試験でも出題が多い。中でも法定相続人については業務との関わりが深い。
相続法総論
相続とは、自然人の死亡により、その者の有した財産上の一切の権利義務(一身専属的なものを除く)を特定の者に承継させること。
一定の相続人や相続分をあらかじめ定めておいて相続させる建前を法定相続主義という。
共同相続人が相続財産の上に持つ権利義務承継の割合
相続人
AさんとBさんの間にCさんとDさん(子供)がおり、Cさんとその妻Eさんの間にはFさん(子供)がいる。
Aさんが死亡した時に既にCさんが死んでいた場合、Aさんの財産は誰が相続するのか?
相続人の範囲
被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹、および配偶者が相続人となる。また、胎児も死体で生まれた時を除いて相続人になる。
配偶者は相続人の中でも特別扱いされており、常に相続人となる。
配偶者以外の相続人については、
①子
②第1順位の相続人である子がいない時は直系尊属が第2順位の相続人
③それもいない時は兄弟姉妹が第3順位の相続人
となる。
単純に、子供→親→兄弟姉妹の順ということ。
「いない」というのは存在していないではなく、死亡または欠格、排除のこと。
※ある人が持っている不動産登記をする時にその人が既に亡くなっている場合、相続人その他の一般承継人(法人の合併など)は表示に関する登記を申請することができる。
相続人の欠格・排除
相続人の欠格(相続欠格)
相続に関して不正の利益を得るために不法な行為をし、またはしようとした者に対しては相続欠格者として相続権を剥奪するという制裁が加えられる。
まあ人を騙すようなやつには財産は相続させん!ということだね。
欠格事由
①故意に被相続人または相続について先順位、もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた者
要は犯罪者だ。
②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発・告訴しなかった者(その者に是非の弁別がない時、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であった時は除く)
見分けること。区別すること。識別。転じて、常識で見分けられる是非・善悪・道理のわきまえ。
普通は家族が殺されたら相手を告訴するよね。
でも妻や親を守るために告発・告訴しないという場合もあるということ。
直系血族に限られるので兄が殺害者だった場合は弟は告発・告訴しなければいけない。
③詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言の作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者
人を騙すやつには相続はさせんと。
④詐欺または強迫によって被相続人が相続に関する遺言の作成・撤回・取消し・変更することをさせた者
同じく、人を騙して遺言に手を加えさせちゃいかんと。
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・履き・隠匿した者。
これも、遺言に直接手を加えるなど言語道断と。
ちなみに欠格は当然に相続権を失う。
(推定相続人の)排除
相続権を当然に否定するほどの重大な事由はないが、遺留分を有する推定相続人の被相続人に対する虐待や重大な侮辱、著しい非行等により被相続人がその者に相続させたくないと考えた場合、被相続人の請求により家庭裁判所が審判または調停によって相続権を剥奪する制度。
人を殺したり騙したりはしてないけど、その他の不適切な行為によって相続はさせたくないなと考えられてる人のこと。
つまり排除は被相続人の請求が必要。「俺はこいつに相続させたくないよ」と。
※欠格も排除も代襲はする。
相続が開始した場合に相続人となるべき者のこと
対象
排除の対象は、「遺留分を有する推定相続人」。
被相続人が「愛人に遺産を相続させる」と遺言を書いた場合、被相続人の意志vs相続人の立場がせめぎ合い、半分は相続人が相続を受けることができる。というもの。
遺留分を有しない兄弟姉妹に相続させたくないと考えた場合には、全財産を他人に贈与ないし遺贈すれば目的を達成することができる。したがって、兄弟姉妹は排除の対象とはされていない。
兄弟姉妹はそもそも遺留分がないので取り返すこともできないということ。
※遺留分権利者は①子(代襲相続人含む)②直系尊属③配偶者
代襲相続
被相続人の死亡以前に、相続人となるべき子・兄弟姉妹が死亡、または排除・欠格によって相続権を失った場合、その者の直系卑属(兄弟姉妹の場合はその者の子に限る)が、その者に代わってその者の受けるはずであった相続分を相続する制度。
もう一度上の例。
AさんとBさんの間にCさんとDさん(子供)がおり、Cさんとその妻Eさんの間にはFさん(子供)がいる。
Aさんが死亡した時に既にCさんが死んでいた場合、Aさんの財産は誰が相続するのか?
→Cさんと妻Eさんの子供であるFさんが代襲相続する。
代襲相続の要点
・代襲原因
①相続開始以前の相続人の死亡
②欠格
③排除
・被代襲者の範囲
①被相続人の子
②被相続人の兄弟姉妹
※下と横にしか流れないということ
・代襲者の範囲
被代襲者の子
・代襲の効果
代襲者は本来被代襲者が受けるはずの相続分を相続する
※相続の放棄は代襲原因とならない
同時死亡の場合
同時に死亡した者の間では相続・遺贈は起こらないが、代襲原因となる。
おじいさんとお父さんが同じ交通事故で亡くなってしまったなど。
再代襲相続
代襲者が相続開始以前に死亡したなどの事情により代襲相続権を失った場合に、代襲者の子がさらに代襲して相続すること。
再代襲相続の範囲は、被代襲者の子である代襲者の子である。もっとも、兄弟姉妹の子の子は再代襲相続ができない。
上の例だとFさんに子供がいれば(Gさん)、Gさんが相続する。
仮にAさんに子供がおらず、さらに親も既に死亡している場合、兄弟姉妹のHさんが相続人になる。
さらにHさんも既に亡くなっていた場合、その子のIさんが代襲して相続することになる。
しかし、Iさんの子供にあたるJさん(兄弟姉妹の子の子)には相続の権利はない。
本人からしたら甥or姪までということ。
相続の効力
相続人は相続開始の時から、帰属上の一身専属権を除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
相続人が数人いる時は相続財産はその共有となる。
権利義務の承継の割合
①債権の共同相続
・可分債権
分けられる債権は相続分に応じて承継される。
生前にAさんがXさんに車(100万円)を売っていた。
AさんにBさん、Cさんの相続人がいれば、それぞれ50万円の債権が承継される。
ただし、Aさんの現金、預金債権については分割されず、準共有状態が存続する。
※現金は遺産分割の調整に使えるのであとで使おうと
・不可分債権
共同相続人全員が共同して承継するもの。
生前にAさんがXさんから車を買っていた。
車1台は分けられないので不可分債権になる。
②債務の共同相続
・可分債務
相続分に応じて分割される。
・不可分債務
各相続人が共同して承継。
・連帯債務
被相続人が連帯債務を負っていた場合、Aさんに負担部分がある。
この負担部分を各相続人が全て負うのは荷が重い。
なのでこの負担部分をそれぞれの相続分に応じて分ける。
生前にAさんが100万円の連帯債務(Aさんが50万円、Xさんが50万円)を負っていた場合、
BさんとCさんはAさんの負担分をそれぞれ25万円ずつ負担する。
③金銭の扱い
遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対し、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることができない。
金銭が当然に分割帰属するのでは、遺産分割で金銭を調整に使うことができなくなり不便だから。
Aさんが土地と100万円の預金を持っていた。
Aさんが死亡後、土地はBさんとCさんの共有状態になるが、100万円を50万円ずつ分けるというわけでもない。
例えば土地を全てCさんのものにした場合などは、代わりに100万円はBさんに、という風になる。
調整役で使うので最後まで手を付けるなということ。
ただし、遺産分割の前でも150万円を上限として預貯金債権の3分の1の法定相続分に相当する額は、各相続人が単独で引き出すことができる。
→葬式などに使うため