建物の名称
建物の所有者において建物を特定するために適宜に付した建物の名称または区分建物の一棟の建物の名称をいう。
家屋番号と異なり、建物の名称を付すかは所有者の任意であるが、建物の名称がある場合は、それを登記する必要がある。よって、名称があるのに登記されていない時は、登記官は職権でその名称を登記することができる。
非区分建物の名称は、表題部の所有者欄に記録される。
区分建物の名称は、区分建物の表題部の建物の名称欄に記録され、区分建物の属する一棟の建物の名称は、一棟の建物の表題部の建物の名称欄に記録される。
まとめると
家屋番号:登記所が付番、変更登記は不可
建物の名称:所有者が付番、変更登記は可
種類
土地の地目と異なり、建物の用途により適当に定める。また、建物主な用途が2以上ある場合には、その種類を例えば「居宅・車庫」と表示する。
※「多目的ビル」などの種類は不適。「居宅・店舗」のように表示する。
種類の区分の取り扱い
①居宅
居住の用に供される建物。貸家や社宅、別荘など。
スケルトン状態(内装工事がされていない状態)の建物の引渡を受けた場合の建物の種類は「居宅(未内装)」として登記し、内装・設備の公示(インフィル工事)が完了後に「居宅」に変更できる。
②共同住宅・寄宿舎
居住の用に供される建物の内、一棟の建物の内部が居住単位に仕切られ、数世帯がそれぞれ独立して生活できる建物。
アパートやマンションなどが共同住宅になるが、区分建物ではなく、一棟の建物を1個の建物として登記する場合、共同住宅となる。
※それぞれの部屋を所有権を分ける場合は区分建物になる(つまり共同住宅は区分建物にすることもできる)
一方、学生寮や社員寮など、多数の者が食号、浴室、洗面所などを共有し、それぞれの居住単位の区画内で独立した生活ができない構造の建物は「寄宿舎」となる。
③店舗、料理店
料亭・割烹などで専ら会席、飲食の場を提供する建物は「料理店」とされる。
通常の飲食店やレストランは「店舗」となる。
デパートや大規模スーパーを「百貨店」とすることもできる。
銀行業務の用に供される建物は、その用途に応じて「店舗・事務所」または「店舗」と表示される。
④事務所、研究所
官庁または公署、会社、その他の法人、団体または個人が営む事業のための事務をとる建物は「事務所」とする。
各種学術の研究、製品の試験・研究を行うための建物は「研究所」となる。
⑤工場・作業所
物品の製造、加工などを行うための比較的規模が大きい建物は「工場」とする。
もっぱら労力作業を行うための単なる仕事場や、家内工業的な製造・加工を行うための小規模の建物は「作業所」として区別する。
※「作業所」であって「作業場」ではない
⑥倉庫・物置・納屋
物品を収納、保管する施設の建物を「倉庫」とする。
家畜飼料用サイロやセメント貯蔵用サイロは「サイロ」と表示してもよい。
一方、個人などが日常雑貨など収納・保管する規模の小さい建物は「物置」として区別する。また農作物や農機具などを収納保管するための建物は「納屋」とする。
⑦病院・診療所
医師又は歯科医師が不特定多数の為に医業を営む施設で、患者20人以上の収容施設を有する建物は「病院」とする。
一方、病院と同様に医業を営む施設であるが収容施設を有しない建物、または患者19人以下の収容施設を有する建物は「診療所」として区別する。
医療法の適用のない、犬・猫などの動物の診療を目的とする建物は規模の大小に関わらず「店舗」とする。
⑧旅館・保養所
旅館、ホテル、ペンション、 民宿などの建物は「旅館」とする。ホテルの建物は「ホテル」と表示してもよい。
一方、社員などの保養のための厚生施設は「保養所」として区別する。
⑨駐車場・車庫・駐輪場
パーキングビル、タワーパーキングなど不特定多数の者の自動車などを注射させるための建物は「駐車場」とする。
一方、ガレージなど、特定の自動車、電車などの車両を格納するための建物は「車庫」として区別する。
自転車置場については「駐輪場」とする。
⑩校舎・講堂・体育館・保育所・教習所
学校教育法による学校を「校舎」とする。講堂、体育館があれば「講堂」「体育館」と表示する。
幼稚園も学校教育法の適用があるが、「幼稚園」と表示することもできる。
学校教育法の適用されない保育所は「保育所」として区別する。(保育園など)
学校教育法の適用されない学習塾、自動車教習所、茶道、音楽、手芸教室など教習用の建物は「教習所」と表示する。
⑪競馬場・野球場・競技場・練習場
競馬場、野球場はそれぞれ「競馬場」「野球場」とする。
陸上競技、サッカー、ラグビーなどの協議の施設は「競技場」とする。(屋根の有する部分や観覧席の下にある事務所などを一体として取り扱う)
ゴルフ練習場、テニス練習場、バッティングセンターなどの打席などの屋根のある部分は「練習場」とすることができる。
⑫集会所・公会堂・会館
公民館など、一定の地域の住民が少神通の会合や冠婚葬祭の式場などに仕様する比較的小規模な建物は「集会所」とする。
大規模な建物は「公会堂」として区別する。
福祉会館、貸し会議室、多目的ホール、結婚式場など、比較的希望の大きい建物は「会館」とすることができる。
⑬劇場・映画館
演劇、寄席などの興行の用に供される建物を「劇場」とする。映画を上映する常設の建物は「映画館」とする。
⑭遊技場
パチンコ、ボーリング、麻雀、ダンス、囲碁、将棋などの遊技の用に供される娯楽施設は「遊技場」とする。
⑮守衛所
官庁、学校、会社、工場などの警固のための詰所は「守衛所」とする。
⑯公衆浴場
銭湯やサウナ風呂などの営業の用に供する建物は「公衆浴場」とする。
⑰鶏舎・酪農舎・畜舎
養鶏のための建物は「鶏舎」、乳牛を飼養している建物は「酪農舎」、専ら肉牛、馬、豚などの家畜を飼育している建物は「畜舎」とする。
⑱給油所
いわゆるガソリンスタンドは「給油所」とする。
⑲市場
卸売市場法による成果、鮮魚、生花などの市場の建物は「市場」とする。
⑳本殿など
神社の本殿など宗教のように供される建物は「本殿」の他、「拝殿」「本堂」「庫裏」「会堂」「僧院」など宗教法人法3条に掲げられている種別により定めることができる。
構造
・建物の主な部分の構成材料
・屋根の種類
・階数
の3つの要素で表示される。(例:「木造かわらぶき平家建て」など)
※平屋建ではなく、平家建なことに注意
構成材料による区分
建物の主な部分の構成材料が異なる場合には、例えば「木・鉄骨造」と表示する。
主な部分が複数の構成材料場合であっても、概ね3分の1以上を占める組成材を併記するようにする。
①木造
柱、梁(はり)、桁などの組成材料に木材を用いたもの。
一部に鉄材が用いられている場合でも木造となる。
②土蔵造
柱、梁に木材を用い、周壁を泥土、漆喰などで塗った構造のものを「土蔵造」とする。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E8%94%B5
③石造
石材を積み重ねて周壁を築造したもの。
http://live-espace.com/stone-house/
④木骨石造
柱、梁に木材を用い、石材を積み重ねて周壁を築造したもの。
http://koume-taro.cocolog-nifty.com/otaru/2019/04/post-b8ff.html
⑤れんが造
れんがを積み重ねて周壁を築造したもの。
⑥木骨れんが造
柱、梁に木材を用い、れんがを積み重ねて周壁を築造したもの。
https://matome.naver.jp/odai/2140065781970404801/2140067025583617503
⑦コンクリートブロック造
コンクリートブロックを組積みして周壁を築造したもの。
https://www.yoshidagumi.co.jp/building/residence/y-block.html
⑧鉄骨造
柱、梁に重量型工鋼、角型鋼、鋼管などを用いた構造のもの。
主要構造部が鉄骨造の場合、外壁にALC板(軽量気泡コンクリート)を飼養していても鉄鋼造と表示する。
ただし、主要構造部か壁構造として主たる部分を構成する場合は「鉄骨・鉄筋コンクリート造」と表示する。
⑨軽量鉄骨造
柱、梁に軽量型鋼を用いた構造のもの。
※軽量鉄骨 鋼材の厚み1.6mm~6.0mm程度の薄い鋼板または、帯鋼から成型された部材
⑩鉄筋コンクリート造
主要構造部に鉄筋を組み込み、コンクリートを打設して建築したもの。
建物の構成材料がワイヤーメッシュ組込み気泡コンクリート構法によるものである場合でも鉄筋コンクリート造と表示する。
⑪鉄骨鉄筋コンクリート造
柱、梁に鉄骨を主筋として鉄筋で補強し、コンクリートを打設して建築したもの。
※1番強い
https://www.nomu.com/mansion/library/trend/special/kato02.html
⑫発泡ポリスチレン造
発泡ポリスチレン板(いわゆる発泡スチロール板)を主な構成材料とし、接着剤とボルトで接合したドーム型の構造物は「発泡ポチスチレン造」とする。
壁部分と屋根部分が一体となったドーム型であるから、屋根の表示をすることなく、「発泡ポリスチレン造平家建」のようにする。
http://seikan-s.jp/2014-05-01/
屋根の種類による区分
①かわらぶき
年度を固めて窯で焼いた日本瓦(和瓦)、洋瓦でふかれている屋根。
※屋根の表記はいらない(一体型だから)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%93%A6%E8%91%BA%E3%81%8D
②スレートぶき
厚型スレート、波形石綿スレート、石綿セメント板などを用いた屋根。
※石板ぶきが本物の天然スレート
https://kamisei.co.jp/news/12620
③亜鉛メッキ鋼板ぶき
亜鉛鉄板、プリント鋼板などを用いた屋根。
https://www.yanekouji.net/character-yanekouji/life-and-maintenance-of-galvanized-roof/
いわゆるレジノ鉄板を用いた屋根も亜鉛メッキ鋼板ぶきとなる。
④草ぶき
あし、かや、わらなどの植物でふかれている屋根。
https://kochi-arindo.com/2017/07/25/22259/
⑤陸屋根・コンクリート屋根
鉄筋コンクリート、ALC板などの上に軽量コンクリートを打設し、防水層を施した勾配の少ない歩行用の屋根を「陸屋根」とする。
一方、鉄筋コンクリートを打設し防水層を施した屋根であっても、勾配のある非歩行用の屋根は「コンクリート屋根」と表示する。
https://gaiheki-com.com/cms/useful/post-1044/
陸屋根
http://blog.livedoor.jp/ogasaseikou/archives/52123382.html
コンクリート屋根
⑥セメントかわらぶき
セメント瓦、厚型スレート瓦などでふかれている屋根。
http://e-yanet.jp/material09301201/
⑦アルミニューム板ぶき
アルミニューム板、アルミ亜鉛合金鋼板などを用いた屋根
https://housejoho.com/aluminum-roof
⑧板ぶき・杉皮ぶき
ひのき、杉などの板材をはいで重ねぶきにした屋根を「板ぶき」とする。
一方、杉皮、ひのき皮などの樹皮をはいで重ねぶきにした屋根を「杉皮ぶき」とする。
https://pixta.jp/tags/%E6%9D%BF%E3%81%B6%E3%81%8D%E5%B1%8B%E6%A0%B9
板ぶき
http://tiibaka.blog121.fc2.com/blog-entry-4.html
杉皮ぶき
⑨石板ぶき
天然スレートを用いた屋根。
http://ohkuma-bankin.com/natural-slate/natural-slate.html
※天然スレート 天然石を薄板状にした屋根材。非常に高価で希少。問題文中に「スレート」とあったら、こちらではなく②の「スレートぶき」と認定する
⑩銅板ぶき
銅板でふかれた屋根。
http://www.yokotake.co.jp/pages/p187.htm
⑪ルーフィングぶき
繊維にアスファルトをしみこませたルーフィングでふかれた屋根。
https://smile-recipe.com/roofing
⑫ビニール板ぶき
波形硬質塩化ビニール板、ガラス繊維強化ポリエステル板などを用いた屋根。
https://refo-tasaki.at.webry.info/201112/article_2.html
⑬合金メッキ鋼板ぶき
合金メッキ鋼板(ステンレス、ガルバリウム鋼板など)を用いた屋根。
https://roof-partner.com/roof-materials-price-9023
⑭空気膜屋根
屋根部分に膜を張り、これを室内の気圧を外気圧よりも高めることによって膨らませた構造物である恒久的空気膜構造の建物の屋根。
https://www.takenaka.co.jp/solution/needs/largescale/service01/index.html
⑮ソーラーパネルぶき
住宅用の太陽光発電用のソーラーパネルと屋根が一体化したソーラーパネル屋根建材型を用いた屋根。
http://my-point.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/i-cube——–2.html
屋根の種類の表示方法
①屋根の種類に参入する部分
建物の屋根の種類が異なる場合には、例えば「かわら・亜鉛メッキ鋼板ぶき」と表示する。
なお、屋根の種類が複数の場合であっても必ずしもすべてを表示する必要はなく、以下の取り扱いとなっている。
①床面積に算入しない部分の屋根については表示しない
②床面積に算入する部分の屋根面積30%未満の種類については表示しない
③屋根が3種類以上ある場合は床面積に算入する部分の屋根面積を種類数で割り、概ね平均以上占める部分の屋根のみ表示する
②地下にある建物の屋根の種類の表示
プレハブ工法により建築された地下部分のみの鉄骨造の建物で、出入口として地上に特別の階段室がない場合の建物構造の表示には、屋根の種類を表示することはなく、例えば「鉄骨造地下1階建て」とする。
一方、地下建物への出入口として地上に屋根および周壁によって囲まれた専用の階段室がある場合の建物の構造の表示は、「鉄骨造り亜鉛メッキ鋼板ぶき地下1階付き平家建て」として屋根の種類を表示することになる。
階数
①原則
1階建ては「平家建」、2階建て以上は「2階建」「3階建」のように定めて表示する。
天井の高さ1.5メートル未満の地階および屋階など(特殊階)は、階数に算入しない。
中2階(ロフト)も同様の取り扱い。
※あえて1.5m未満で作って床面積部分に算入しないようにしている(つまり1.5m未満ならロフトがあっても平家建)
天井裏の収納スペースなども1.5m未満であれば算入しない。
1.5m以上であっても、建物の屋階にある出入口のためだけの階段室や、エレベーターの機械、高置水槽、冷却装置などのを収容する塔屋については階数に算入しない。
②地下建物
地上に建物はなく地下のみの建物の場合には例えば「地下1階建」のように表示する。
※「地下平家建」という建物はない
地下付きの建物の場合は、例えば地下に2階部分まであり、地上に1階部分があれば「地下2階付き平家建」のように表示する。
③ガード下にある建物
ガード下を利用して建築された建物の場合は「ガード下2階建」のように表示する。
④渡り廊下で接続された一棟の建物
建物と建物を渡り廊下で接続した建物で全体を一刀の建物として登記する場合は「渡り廊下付き3階建」のように表示する。
⑤床上げされた建物
床上げされた建物で、1階の床面が地盤面から1.5m以上ある平家建は「高床式平家建」のように表示する。
⑥傾斜地にある建物
傾斜地に建築された建物で、甲、乙の部分が階段室で接続しており、一棟の建物として認められる場合、甲、乙および階段室の部分を第2階として取り扱う。なお、出入口が上階にあっても、地表面にある最低階を1階と表示する。
⑦地上階と地下階の区別
地上階と地下階の区別は、出入口や道路の位置にかかわらず、地盤面を基準として、床面が地盤面より上にある階層は地上階、床面が地盤面より下にある階層は地下階として取り扱う。
なお、床面が地盤面より下にある階層については、床面から地盤面までの高さがその階の天井までの高さの1/3以上ある時は、当該改装は地下階として取り扱う。
※つまり、天井までの高さの1/3以上地面に埋まっていれば地下階となる